＃36 ページ40
「兵長!時間です!!」
肩を軽くゆすりながらさっきよりも声のボリュームを上げる。
すると、そこでやっと薄っすらリヴァイ兵長の目が開いた。
「………うるせぇ………お前のせいで俺は寝不足だ」
「……それについては大変ご迷惑をおかけしました」
これでもかというくらいに、ゆっくりと起き上がると兵長は気だるげに頭を掻いた。
そして思い出したように私に視線を投げると
「……体調は大丈夫そうか」
「…はい。万全です」
決して万全ではないのだが、作戦に支障をきたすほどでもない。
少し頭が重いだけで、他はすべて全快している。
「嘘をつくな」
「嘘ではありません」
「顔色が悪い」
「朝は低血圧だからです」
「よくもまぁ、そんなでまかせが出るもんだな」
「本当の事ですから」
「……チッ、そういうことにしておいてやる」
そういって、籠から野戦用の食料を取り出すと黙々と食べ始めた。
兵長が食べている間に、マットを2人分まとめる。
その間、食事をとるかを思案したが、一日体がもちそうなことと、何より食欲の無さが手伝い、野戦食には手を付けないことに決めた。
「お前も早く食え」
「……いえ、それ、のどが渇くでしょう、紅茶を淹れる時間はないので、水、持ってきましょう」
食い下がって私を止めるつもりのリヴァイ兵長が口を開く前に私はさっさと部屋を出た。
すると、階段を降りたところで、ハンジと出くわす。
「やぁ!ジゼル、おはよう」
「おはよう」
「昨日はよく眠れたかい?」
「…まぁ、眠れたよ」
「それは、よかった。じゃあ、うまくいけば今日が最終日!がんばろうね」
「もちろん」
ハンジは上に戻り、私は荷馬車へと荷物を取りに行く。
外へ出ると団員も皆起き始めており、少しずつ、作戦開始時間へと緊張感が高まっていた。
「お待たせしました。水です」
「お前、持病でもあるのか?」
いきなりの質問に私はつい面食らってしまう。
なぜそんなことを?というように首をかしげて見せれば
「さっき、ハンジが部屋に来て、お前の顔色が悪いことを気にしていた。そして、ちゃんと薬を飲んだかどうかについて気にしていたぞ」
全く余計なことをしてくれた。戻ったらあのメガネにきつく灸を据えてやらないとな。
目の前の男に嘘など通用するわけないのだが……何と言い逃れをしたものか。
「持病はありません。ただ、壁外に出る前、少し風邪気味で、その時渡された薬の事を言っているのでしょう」
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作者名：clear | 作成日時：2017年5月5日 21時
