【リヴァイ】残酷で美しい世界に【進撃の巨人】 (ページ39)

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＃35 ページ39

結局、俺は柄にもなく、ジゼルの手を離すことをしなかった。
単に、このクソガキを可哀そうに思っただけなのだろうが。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿否。

同じ、地下街出身といい、自分を変える人間との出会いといい、その人間が自分のもとからいなくなる、そんなところまで俺とクソガキは似てるんだ。

だから、俺は今この手を離せないんだろう。
きっと、コイツは今、夢の中でヤシャという男と幸せな過去を過ごしている筈だ。
しかし、俺が今この手を離してしまえば、コイツの夢の中でまたヤシャという男が死んでしまうだろう。
そんなの、翌朝の目覚めが悪すぎる。

「………感謝しろ、ヤシャというやつじゃなく、俺にな」

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

まただ……ヤシャが行ってしまう……遠い場所に…。

大きな背中が私から遠のいていく。そうなるはずなのに…。
今日は、ヤシャがいなくならなかった。

ヤシャの手は大きくて、温かいよ。
私、ヤシャの手が大好きだ。

………手だけがすきなのかって?そんなわけない。手〝も″だ。
ヤシャの全部が大好きなんだ。まるごとだ。

だから、ずっと……私の、隣に＿＿＿＿＿＿＿

　 ***

夢の中でヤシャがいなくならなかったのは、これのおかげか。

夜明けが近くなった時間に目を覚まし、私は、ずっと手が温かかった理由を知った。
きっと、また寝言でもいいながら自分から握りに行ったのだろう。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿………意外だ。

リヴァイ兵長なら私が手を握った瞬間に振りほどくものだと思っていた。
だが、手は今の今までつながれたまま。

エルヴィンに引き取られてしばらくしてからもこんなことがあった。
その時は、自分から握りに行ったなんて想像できないものだから、エルヴィンに「何している」とキレながら聞いてしまった記憶がある。
あっけらかんな顔で「君が本当に珍しく甘えるものだからつい握ったままにしてしまったよ」なんて言われたことがある……。

「……そんなことより早く準備しないといけないな」

リヴァイ兵長の手を放し、普通に声をかけた

「兵長、リヴァイ兵長、そろそろ起きてください」

「…………」

「あの………出立まであと3時間切ってます」

「………」

隣の部屋からもハンジたちが起きだした音が聞こえ始める。
一刻も早く兵長を起こしたいのだが……。
なんだ、この寝起きの悪さは………。