＃32 ページ36
つかの間の食事の時間も終わり、明日展開する陣に変更があり、正面索敵班で俺と一緒になったことを伝えると、クソガキは複雑そうな顔を浮かべた。
「なんだ。俺と一緒は不満か」
「いえ、そういうことではなく。
私とリヴァイ兵長を一緒にしてしまっては…その…」
ジゼルが言いたいのはどうやら、俺と一緒になると、左翼や右翼の攻撃力が下がるのでは、と言いたいのだろう。
「俺もお前と同じことをエルヴィンに言った。
代わりに、正面索敵の人数を減らし、奇行種がきても生存率が上がるようにするらしい」
「そういうことなら……」
「そんなことより、明日は早く出る。
夜明けと同時に動くからな。早く寝ろ」
「そういうことならもう寝たほうがよさそうですね…
ここはリヴァイ兵長が使ってください。
どうぞ、先程一緒に荷馬車から下ろしてきたマットです」
布よりはいくらか分厚いマットを渡され、ジゼルは部屋の隅に、自分の寝床を作っていた。
この部屋にはベッド一つしかないため、こうなることは読んでいたが、俺だけベッドというのはなんだか気が引けた。
「それでは、おやすみなさい」
「……あァ」
しょうがないかと思い込み、ベッドの上に自分の分のマットを敷いて寝っ転がった。
ジゼルには早く寝ろと言っておいて、反対に俺の目は冴えていた。
とりあえず、目を閉じておけばいつか寝れるだろうと思い、目を閉じる。
***
どのくらい時間がたっただろうか。
やっと、意識がうつろい始めたとき、横から、人が動く気配がした。
狸寝入りを決め込み、さりげなくジゼルのほうに寝返りをうつ。
そして、目を薄っすら開ければ、やはり、ジゼルが起き上がっているのが薄ぼんやりと見えた。
ジゼルは頭を抱え込んで何かにこらえているように見える。
やがて、手を口元にあてて、小さくうずくまる。
さすがに見ていられなくなってきた俺は、起き上がりジゼルの横に膝をついて様子をうかがおうと声をかけた。
「ジゼル……どうした」
「すみ、ません。起こしてしまいましたか…」
「眠れなかっただけだ。お前のせいじゃない。
そんなことより、お前は大丈夫か、具合が悪いのか」
「大したことでは………ちょっと頭が痛くて起きてしまっただけですから」
月明かりも手伝って、余計に顔色が悪く見えるクソガキは到底大丈夫そうには見えなかった。
「大丈夫じゃねぇんだろ、クソガキ。
……しょうがねぇ、ハンジでも起こしてくるか」
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作者名：clear | 作成日時：2017年5月5日 21時
