＃12 ページ16
「うわぁぁあああああっ!助けてくれぇッ」
「右前方から二体の巨人!うち1体は奇行種!」
右側から悲鳴が聞こえてくるのに合わせて、班長が増援へ行くよう指示を出す。
鋭い声でのその指示の先は……私だ。
「ジゼル!お前が行け!」
「はい!」
右側へと馬を走らせ、まずは奇行種を片づけるために近くの木へアンカーを打ち付けた。
奇行種の後ろへ回り込み次はうなじへとアンカーを打ち付ける。
最後にスピードをつけながら2本のブレードを振り下ろした。
「よしっ!」
巨人が倒れる前に身近にあった木の上に移動すると、私の動きを追ってきたもう一体の普通の巨人が迫ってきていた。
隣の木に移り、巨人の横をとらえると、アンカーを巨人本体に打ち込み、一気にうなじを狙う。
2体目も無事仕留め、私のもとに戻ってきた愛馬に飛び乗ると、生き残った団員を連れて隊列へ引き返した。
「戻ったか」
「はい、死者1名、けが人2名はここに連れ帰りました。
無事だったものは、隊列を少しこちら側に寄せ、引き続き走らせています」
「よくやった。けが人はもうすぐの休憩地点まで持ちそうか?」
「はい。十分かと」
「わかった。戻れ」
私は頷くと自分の元居た位置へと戻った。
「やるじゃねぇか、クソガキ」
……なぜ、死のうと決心をしたばかりなのに、この人と一緒の位置になってしまったのか。
実力を見せてみろと言われた手前、この人の目の前で死んだら「大したことねぇな」と言われそうだ。だが、この際仕方ない。癪ではあるが死んだらどうせ聞こえないのだ。考えなければいい。
「これくらいは当然かと」
「素直に喜べよ。クソガキが」
***
予想以上の死者を出しながらも、限界地点まで進み折り返した帰りの道中。
今まで以上に仲間を助けられた。最後の最後で上出来だと思う。
だが、このまま巨人が襲ってこなければ、私は生きて帰ることになってしまいそうだな。
「後方より巨人の集団を確認!」
「壁までもう少しだ！このまま走らせろ!」
「ですが、奇行種が何体か混ざっているもようです!
このままでは逃げ切れません!」
不謹慎にも私はこの伝令を好都合だと感じた。
後ろを振り返れば、巨人が6，7体迫ってきている。
そのうち奇行種は3体ほどといったところだろうか……。
「クッ!……後方班全体戦闘態勢へ!…」
「私も行きます!」
「ジゼルか!頼む!」
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作者名：clear | 作成日時：2017年5月5日 21時
