【リヴァイ】残酷で美しい世界に【進撃の巨人】 (ページ9)

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＃05 ページ9

自分が地面に踏みつけられていると自覚したジゼルは、俺の足が胸の中央にあることに気づき、顔色を変えて俺の足から逃れた。
そうして、俺から距離を取ると、首からぶら下がったシルバーリングを見て、丁寧に土を払ったとに掌へと愛おしそうに握りこんだ。

「どうやら、とんだ迷惑をおかけしたようですね。申し訳ありません。
……夢に出てきた男と貴方が随分と似ていたもので、夢との区別がつきませんでした」

ジゼルは、もう一度「申し訳ありませんでした」と言って、深く頭を下げる。
先程までの好戦的な雰囲気は消え失せたが、しかし顔つきはどこか悔しそうだった。
その顔を見たとき、一瞬何かよぎった気がしたが、気のせいだとすぐに思考を隅へと追いやった。

「食堂での非礼も重ねて謝ります。リヴァイ殿、どうかこの若輩者の無礼をお許しいただきたい。
……では、職務へ戻らねばなりませんので、お先に失礼します」

そういって、ジゼルは俺の横を通り過ぎていった。

　 ***

エルヴィンの元へ戻ろうにも、なぜだか、足は素直に動かず、結局自室へと落ち着いてしまった。
ベッドに腰を下ろし、深くため息をついてから、私はクローゼットへと意識を向けた。
引き寄せられるようにクローゼットを開ければ、恩着せがましく私を助けた少年が、私に羽織らせた上着を見つける。

あの日から、もう一度、あの少年に会ったら叩きつけて返してやろうと持ち続けてきた上着。
だが、顔すらはっきりと覚えていない相手にこれを返す術は見つからず、何度も捨てようかと思った。しかし、何か一言でも憎まれ口を叩いてやりたくて、結局、捨てられなかっのだ。

リヴァイには本当に申し訳ないことをした。蹴って起こすやり口には少々文句をつけてやりたいところではあるが。

＿＿＿＿＿コンコンコン

「やっほ～!久しぶり～ジゼル～元気にしてたぁ!」

エルヴィンが小言を言いに来たのか、と思いドアノブへ手を伸ばしかけて止めたのは正解だった。
私が反応を示す前に勢いよく開かれたしまったのだから。

「ハンジ、それではノックの意味が」
「まぁまぁ!ノックするようになっただけましでしょう?」

「そういう問題では……まぁ、いい。それで用件は?」

「期限ギリギリの」
「却下だ」

「即答しないでよ!まだ全部言い終わってないでしょう!」

「前回を考えれば当然の反応だ」

「そんなこと言わずに!今回はすぐ終わるから!お願い、お願いお願いィ!」