煙の夢 from 甘く、沈む。-Slow Days-【N】 ページ9
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煙のようなものが私たちを世界から隠してくれればいい。
そんなことを時々思う。
だってこの世界には多くの人がいて、私たちはなかなか二人きりというものにはなれないのだ。
困ったことに私も和也さんも意外と誰かに繋ぎ止められている。
あぁ、でもこれはきっと困るべきことなんかではなくて、喜ぶべきことなのだろうと分かっているんだけど。
それでも時々思うのだ。
和也さんと二人の世界を邪魔されなければいいのにと。
そんなときには決まって和也さんの姿を探す。
現実主義に見える和也さんだけど意外と夢見がちなところがあると私は思っている。
そうでなければ私の魔法使いでいることも私のために魔法で偽物の王子様に変身してくれることもないはずなのだ。
だから和也さんが吐き出す灰色の煙が私たちを世界から隠してくれればいいのにとくだらない想像をしてみたくなる。
けれどこの世界というのは、そんなにファンシーにはできていない。
提出する資料を上司に届けに行ってデスクに戻ってきたら和也さんがいなかった。
席に座ればいつも見えている猫背の背中は今は空白、そこにはただ空気があるのみだ。
私は首をひねって部屋の中を見渡す。
雑然とした事務所の中に探している姿は見当たらない。
一緒にお昼食べようと思ってたのにどこ行ったんだろう。
姿を探して廊下に出てエレベーターホールの方へと歩く。
今までだったらここにいるだろうとあたりをつけていたであろう喫煙室にも当然のように探している猫背は見当たらなかった。
「ここじゃない……」
和也さんが私に何も言わずにどこかに行くなんて珍し、……くもないか。
すぐに思いなおしながら見慣れたエレベータホールの床を踏む。
ちょっと暗いホールで煌々と灯った自動販売機には見慣れたカフェオレが並んでいる。
和也さんの分のコーヒーも買って待ってようかなぁ。
気が向いたというやつだ。
私はポケットから財布を取り出して硬貨を二枚滑り込ませた。
カランカランと箱の中から音がする。
パッと灯る光を目でなぞっていたら隣のエレベーターがチーンと音を立てて開いた。
ピッ、ガコン。
吐き出された缶コーヒーに手を伸ばしてしゃがみ込む。
「おまえ何してんの」
「こっちの台詞なんですけど」
エレベーターから出てきた影が和也さんの声で言葉を吐き出すものだから私は反射的にそう返していた。
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iCHiKA(プロフ) - tubinさん» コメントありがとうございます！そして、嬉しいお言葉をありがとうございます！お楽しみいただけたとのこととても光栄です。今後もお楽しみいただけるよう頑張らせていただきますね！ (2021年8月24日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
tubin - すごくおもしろかったです！！ 無中になって読んでました!! 続きがすごく楽しみです!! 応援してます!! これからもがんばってください！！ (2021年8月22日 20時) (レス) id: 73a03e30c5 (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - にゃんちきさん» にゃんちき様、いつもありがとうございます！糖度高めを目指して頑張ったお話でしたが、お役に立てたようで良かったです。こちらこそご賞味ありがとうございました。 (2021年8月21日 20時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちき(プロフ) - 最近疲れ気味だった私には翔さんの甘さが最高のご褒美になりました。ご馳走様でした( ´ω` )/ (2021年8月19日 19時) (レス) id: 64ed16a329 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年8月15日 14時
