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だからまぁ、何かを予感していたと言えば嘘ではないと思う。
新月の夜、私が目を覚ますと部屋の中は真っ暗で、けれど彼の影だけが扉に手をかけていた。
「どこにいくの」
私の声に影は振り向く。
「わかんねぇな、どっかだ」
振り向いた影はそう言った。
わからない。
そう言ったということすら私の想像かもしれないし、そもそもそこに彼の影なんてなかったのかもしれない。
「なぁA、一応言っとくけどさぁ」
「なに」
「お前は俺の運命のつがいだから。それだけゆめゆめ忘れんなよ」
訳の分からないことを智は当然のように言う。
わからない。
そんなことを言うのに、なぜどこかへ行こうというのだろうか。
けれど、
「なにそれ」
と可愛くない返事を返すだけで行かないでなどと可愛げのあることを言おうとはしない私は、やはり彼と出会ったばかりの子供ではなくなってしまったのだ。
大人になった私には、全部わかってしまうから。
「ふはは、じゃ、死ぬなよA」
最後にも智は笑っていた。
その幼い笑顔は今も昔も変わらない。
私が好きになった智の、ずっと、私が好きになった智のままだ。
誰が悪いかと言えばそうだなしいて言うなら神様などと言う不確かなものにでもしておこうと思う。
一人になった部屋でベッドにもぐりこんだ私は、泣くでもなく笑うでもなく見えない何かを睨みつけた。
たぶん、好きになった自分自身が一番悪いのだろうと思う。
あれからもう何年たったか。
私は今箱庭を出て世界の片隅で暮らしている。
新しいつがいは見つからなかったらしい。
私は片翼のまま世界と言う場所に解き放たれたのだ。
世界には多くの人が行きかっている。
この通り過ぎることしかない大勢のその他の人々の中に彼もいたりするんだろうかと新月の夜に想像することが私の日課になっていた。
死ぬなよ、と言ったのだから、智の方こそ死んでるわけないのだ。
それは約束が違うから。
だからいつか、どこかで彼に会ったら、聞いてみようと思っている。
私は忘れていない。
だから、貴方は私と言うつがいを覚えていますかと。
(ゆめゆめ)
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iCHiKA(プロフ) - tubinさん» コメントありがとうございます！そして、嬉しいお言葉をありがとうございます！お楽しみいただけたとのこととても光栄です。今後もお楽しみいただけるよう頑張らせていただきますね！ (2021年8月24日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
tubin - すごくおもしろかったです！！ 無中になって読んでました!! 続きがすごく楽しみです!! 応援してます!! これからもがんばってください！！ (2021年8月22日 20時) (レス) id: 73a03e30c5 (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - にゃんちきさん» にゃんちき様、いつもありがとうございます！糖度高めを目指して頑張ったお話でしたが、お役に立てたようで良かったです。こちらこそご賞味ありがとうございました。 (2021年8月21日 20時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちき(プロフ) - 最近疲れ気味だった私には翔さんの甘さが最高のご褒美になりました。ご馳走様でした( ´ω` )/ (2021年8月19日 19時) (レス) id: 64ed16a329 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年8月15日 14時
