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「ねぇ雅紀くん、さっき何か言った？」
ジェットコースターを降りるとAがそう言って俺を見上げた。
こてんと傾げられた顔に俺は笑って顔を振る。
「ううん、何も」
今もまだ繋いだままの手は確かにAの柔らかなそれで。
夢のようなものだとしても握ったこの手は本物だから。
だからこそほんの少しだけ、伝えてみたくなってしまった。
今のAは俺の言葉に「私も好きだよ」と一言返してくれただろう。
それでも、直接伝えてしまうのは俺の中の何かが邪魔をした。
残念な気もするし、安堵しているような気もする。
人の心とは複雑で、得てして後悔を避けたがるものだ。
言って後悔言わずに後悔。
今日の俺は言って後悔を避けた、ただそれだけのことだ。
夕日が遊園地をオレンジ色に染めている。
夜はこれから。
だけど、俺たちの一日はそろそろ終わりだ。
「A、暗くなる前に帰ろうか」
「……もう？」
Aは少し不満そうな顔をした。
言いたいことは分かったけど俺は気づかないふりでAの頭に手を乗せる。
ずっと繋いでいた手が解かれて、以外にも俺はホッとした。
「また今度出かけよう。今日はほら、明日も仕事だし」
嘘を吐いた。
今日が何曜日か俺は知らない。
けれど当たりの確率は七分の五。
俺の賭けは功を奏してAはこくんと頷いた。
「それもそうだね。それに、明日も朝会えるし」
Aはそう言って小さく笑みを浮かべた。
Aの頭の中には今キッチンカーの中にいる俺が浮かんでいるのかな。
そうだったら嬉しいし、例えば家まで迎えに行った俺が浮かんでいるならもっと嬉しい。
でもそれを聞くことはしない。
俺はまたAの手を取った。
これが最後になるかもしれないから。
「さ、一緒に帰ろう」
「うん」
握り返された手の感触を忘れてしまった方が良いのか悩む。
しばらく歩きながら悩んで、決められないから天に任せようとそう決めた。
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iCHiKA(プロフ) - tubinさん» コメントありがとうございます！そして、嬉しいお言葉をありがとうございます！お楽しみいただけたとのこととても光栄です。今後もお楽しみいただけるよう頑張らせていただきますね！ (2021年8月24日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
tubin - すごくおもしろかったです！！ 無中になって読んでました!! 続きがすごく楽しみです!! 応援してます!! これからもがんばってください！！ (2021年8月22日 20時) (レス) id: 73a03e30c5 (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - にゃんちきさん» にゃんちき様、いつもありがとうございます！糖度高めを目指して頑張ったお話でしたが、お役に立てたようで良かったです。こちらこそご賞味ありがとうございました。 (2021年8月21日 20時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちき(プロフ) - 最近疲れ気味だった私には翔さんの甘さが最高のご褒美になりました。ご馳走様でした( ´ω` )/ (2021年8月19日 19時) (レス) id: 64ed16a329 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年8月15日 14時
