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in side
「大ちゃんお疲れ」
「あれ?いのちゃんとここで会うの久しぶりだね」
「うん、そうだね」
バイト先のロッカーで着替えをしていると、後から大ちゃんが入ってきた。
大ちゃんに振られてから、シフトを変更してもらっていたけど、俺は店長に頼んでまた大ちゃんと同じ時間になるようにしてもらった。
まぁ、格好悪くてそんなこと大ちゃんには言えないけど。
「あー、寒っ!」
「もう12月だもんね…」
バイトを終えて外に出ると、昼間よりも風が冷たかった。
吐く息が白くて、もう完全に冬の空気になっていた。
横を並んで歩く大ちゃんは、両手を口元に当てて、はぁーっと温めていた。
俺たちの今の関係って、言葉で表現すると何て言うんだろうか。
あの日、お互いの気持ちを確認し合ってから、なんとなく続いている不確かな関係。
以前のような友達?みたいな関係とはまた別のような気もしている。
またこうして大ちゃんと普通に会えるのは嬉しいけど、この関係を変えたいと思っているのは、きっと俺だけなんだろう。
「…あ、あのさ大ちゃん。クリスマスって、何か予定…ある?」
「………」
「あの、もし空いてるならさ、どこか行かない?」
「………」
大ちゃんは急に無口になって、返事に困っているように見えた。
「あ、もしかしてシフト入ってたっけ?そしたら、バイト終わったあととかでも…」
大ちゃんの態度とは反対に、俺は1人必死になっていた。
何かきっかけさえあれば、変わるんじゃないかって俺は思ってた。
「……ごめん、いのちゃん。その日予定があって…」
「そ、そっか」
なんとなく、大ちゃんの返事は分かっていたような気がする。
「ごめん…」
「ううん、気にしないで」
俺は必死に笑ってみせた。
俺たちの目の前で光る信号は、長い時間赤いままで、青に変わる気配を見せなかった。
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作者名:Tea time | 作成日時:2021年10月13日 11時