短い間ではありますが。 (ページ34)

今日:10 hit、昨日:3 hit、合計:9,172 hit

＊末澤side ページ34

球技大会なる行事を皆が心待ちにしてるのか落ち着かない雰囲気。
真中さんは通常運転ってところ。
えーと…気まずいと思ってるのは俺だけですか？

「先生！…末澤先生！」
「ん、んぇえ？」
「はは、声めっちゃ裏返ってる」
「あー…や、ボーッとしてたわ、ごめん」

昨日の今日ならぬ月曜日の木曜日やけど、教室にいる時間が少なかったから感覚は変わらへん。
何かと思えば、自分が受けてなかった授業範囲を解説して欲しいなんて何とも素晴らしい返答が。

(にしても…)

あの日、咄嗟に真中さんを抱き締めてしまって、我に返った瞬間はそりゃあ焦ったし、ごめんって謝っても黙ってて怒ってるよなって思ったけど。
真中さんは未だ涙の残る両目を指でなぞりながら俺を見て、少しだけ口角を上げて笑ってくれて。

「ありがとう、先生。もう大丈夫」

まあまあ弱々しかった言葉の信憑性は薄いけど、今こうやって俺の説明を聞きながら教科書の字に目を落とす真中さんの表情は確かに軽い。
何か勝手に安心したんか、またボーッとしてて、我に返ったら目の前で手を振る真中さんがいた。

「何かあったんですか？高橋くんもですけど」
「恭平も？恭平どこや…あ、」

ごめんなさい、何となく察しちゃいましたわ。