イマジナリーフレンド【轟焦凍】 (ページ5)

今日:7 hit、昨日:20 hit、合計:9,830 hit

五ページ5

❆

稽古を抜け出したのはその一度きりだった

もう二度とAに会えないだろうと思っていた

『しょーうーとー！元気〜？』

「Aちゃん！どうしてこんなところにいるの？お父さんにみつかったらまずいよ…」

『しーッ…！……心配しなくても大丈夫』

奇妙なことに、Aはどこからも現れて俺に会いに来てくれた

『焦凍、がんばれー！』

「…Aちゃん…？…うん、ありがとう！」

「焦凍！気を逸らすな！」

時に俺が特訓しているのを見学していたり、

『焦凍はがんばってるよ。つらい時は泣いていいよ。そのときはAがそばにいるね』

稽古で心が折れそうになったときは弱音を聞いてくれて

一緒に親父の嫌いな所を語り合ったりもした

夜は一緒に布団に入って

俺が眠ってしまうまで本を読み聞かせてくれたり

話し相手になってくれた

『焦凍はどんなヒーローになりたい？』

「オールマイトみたいなヒーロー」

『焦凍は優しいからきっとオールマイトみたいに多くの人を助けるんだろうね』

「うん、そうなりたいな…。でも、……」

俺は親父にオールマイトを超える逸材として求められている

俺がもし、親父みたいな奴になってしまうのなら……？

好き勝手に夢みて語っていいのか考えてしまっていた

『なりたい自分になっていいんだ。なりたいもの、見失っちゃだめだよ』

「みうしなう、って…？」

しかし朝にはもう、Aはいなかった

Aはいつも俺を応援してくれていた

ずっとそばにいてくれた

それなのにAは突然、俺の前に姿を現さなくなった

俺も年月が経つにつれ、Aのことを忘れていった