お巡りさんこの人です ページ19
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「 なにこれめっちゃAちゃんの匂いすんだけど?!は?!?天国かここは?!? 」
「 控えめに言ってキモいです社長 」
「 ごめんつい興奮しちゃって 」
「 弁解になってませんよそれ 」
お風呂から上がってきた彼はどこからどう見ても水も滴る良い男で、咄嗟に顔を背ける。
服も兄が着ていた物と同じ筈なのに、なんでこうも違って見えるんだ畜生。
鍛えすぎなんだよくそ。
緊張していることを誤魔化すように、私はそそくさとキッチンに向かって、冷蔵庫に入れていた食材で簡単な物を作り始める。
社長には適当に寛いでいてくれと言ったのだが、彼はキッチンまで着いてくると、じっと私の手元を眺めていた。
肉まんの時といい、それの何が楽しいんだか。
「 ……社長って、誰かに変人って言われたりしませんか 」
「 うーん、よく言われるな 」
「 やっぱり 」
「 変人な俺は嫌い? 」
「 どっちでもないです 」
「 それはつまり好きってこと?!? 」
「 人の話聞いてました?? 」
タオルを頭に乗せて柱にもたれ掛かる彼を横目に、卵の殻にヒビを入れて中身をボールに入れる。
今日の晩御飯は簡単に親子丼だ。お肉もそろそろ使わなきゃいけなかったし、量も作れるから、面倒くさいときにはよく作る。今日がその面倒くさい時。
料理中はあれきり口を開くことなく、静かだった社長。お皿に盛り付けると無言でテーブルに並べてくれたし、彼なりに手伝いをしてくれているのだろうか。
……アルバイトごときが社長に手伝わせるのは大変心苦しいが。
「 これがAちゃんの手料理……! 」
「 そんな凄いものじゃないですよ 」
「 こんなんもう実質同棲でしょ 」
「 実質とかないです 」
「 じゃあ同棲?!? 」
「 誰か通訳してくんねぇかなぁ 」
一切会話が成り立たない彼は放っておいて、冷める前に「 いただきます 」と簡単親子丼を食べ始める。
すると続くように社長も足をつけ始めて、口に入れた瞬間キラーンと目を輝かせてきた。こんなので喜ぶなんて、そんなにまともな食事を取ってこなかったのかこの人。
「 普段はカロリーとか気にしてんだけど、これはおかわりしたい 」
「 ありますよ。おかわり 」
「 まじで?!する!おかわり! 」
なんだか、大きな子供みたいだな。
……なんて思ってたら、彼に怒られてしまうだろうか。
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時