cent seize ページ18
セ「あの駄犬と勝負でもしているのかね」
『はい？』
セ「つまらん冗談だという意味だ」
『……じゃあ、本気ですか？』
教授は何とも言えない顔で私を見た。彼はこの状況にすら追いつけてないというように。
私は彼の顔を見ると、はっきりと言った。
『でも、私達にはヤドリギの下に行く権利すらありませんよ』
セ「……そうだな」
教授の眉がふっと下がった。私は、気づくと彼の手を引いて会場を出ていた。
周りの視線など関係ない。いつもはグイグイと手を引く側なのに、引かれる側なのが新鮮なのか、教授は気まずそうにしていた。
人ごみをかき分け、薔薇園に入る。人通りが段々と減り、辺りは暗かった。
セ「どういうつも……」
私は言いかける教授を力いっぱい引っ張って、バラ園の影に入り込んだ。
暫く、呆然とした教授と、私の落ち着かない呼吸だけがそこにあった。
『……クリスマスを嫌いだと思ったのは初めてです』
セ「………」
『期待が過ぎるから』
声が震える。自分でも、自分が何をしようとしているのか分からなかった。
セ「今日のお前はらしくない」
『そんなの分かってます』
セ「いつもの余裕の笑みはどうした」
だから、と私が口を開こうとすると、急に教授の掌が私の頬を触った。そのままぐっと上を向かされる。
教授の端正な顔が、ほんの少しの距離にあった。
『な……にを……』
セ「これは」
『うわっ？！』
教授の指が頬を滑り、耳を触って、イヤリングに触れた。
『ち、近』
セ「答えろ」
誰から貰った。──彼は授業中に嫌味を言う時のように、ねっとり囁いた。
心臓が持たない。押しのけようとすると、彼の腕が私の背中に回った。思い出したように、また体が熱くなる。
教授が目を細めて私を見た。私は恐る恐る口を開き、言った。
『シリウス……から……』
彼の眉間の皺がぐっと濃くなる。彼はやっぱりなと言わんばかりに乱暴に私の両耳からイヤリングを外すと、ローブのポケットにつっこんだ。
『痛っ！ちょっと、それ……』
セ「没収だ」
『はぁ？！教授まで子供じみたことしないでくださいよ！』
セ「どの口が」
『なんか教授も今日変ですけど』
セ「……クリスマスのせいだと言ったら」
疑わしげに見上げてみると、彼は自嘲的に笑った。私は少し笑って、そのうち、耐えきれなくなったかのように彼に体を預けた。
教授の手が、またそっと背中に回る。
この時間が許されないことは分かっていた。
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ユーレイ(プロフ) - 羽音さん» メッセージ、イラストともにありがとうございます！楽しく拝見させてもらいました。自分の小説からイラストまで書いていただけるなんて本当に嬉しいです。ありがとうございます！ (2019年6月1日 23時) (
レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
ユーレイ(プロフ) - mikittyさん» 素敵なコメントにこちらこそニヤニヤしました……この焦れったい感じが書くのが楽しくて、どうしても長引かせてしまいます笑 (2019年6月1日 23時) (レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
羽音(プロフ) - メッセージに書いていたURLです！→http://uranai.nosv.org/img/user/data/0/9/a/09ad2710a06e0237527c6512112dc071.png (2019年5月31日 21時) (レス) id: d257d5a444 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 更新されているとニヤニヤしちゃうくらいに好きです…お互いに焦れったい感じがたまりません！セブルスという人物をとても細かく丁寧に描いている素晴らしい作品です。これからも楽しみにしています！ (2019年5月31日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
ユーレイ(プロフ) - パンジーさん» 空きコマのお供にしてもらえてよかったです！！(！？) さらに面白いと思って貰えるような展開にできたらと思ってます。楽しいコメントありがとうございました！ (2019年5月30日 21時) (レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：O
| 作成日時：2018年10月23日 12時
