cent neuf ページ11
A side
ほんの気まぐれだった。
いや、もしかしたら少しは淡い期待を抱いていたかもしれない。とにかく、私は理由をつけてセブルス教授と踊っている。
てっきり、彼は踊れないのかと思っていた。だって、そういうのとは無縁な人に思えたし。
けれど今、実際には私の方が彼にリードをされながら何とかダンスの形を保っている。
何故上手いのか、と訊いても彼は私への厳しすぎるとも言えるアドバイスしかしてくれなかった。私はそれに悪態ついたが、実を言うとそうでもしないと心臓が口から飛び出そうだった。
好きな人と踊っている。
触れる体温が、彼につられて揺れる身体が、そう語り掛けてきた。
彼は顔色ひとつ変えないのに、私は火照っているような気がしたし、顔が赤くなっていないか不安だった。こんなの、私らしくないと思った。
今だけは、互いに関わりを持ってはいけないとか、そういうことはどうでもよくなっているんだ。この一瞬が、どうも儚くて、美しくて、心地よくて──
『2人きりのダンスパーティなんてロマンチックですね』
セ「ぬかせ」
火照りが心地のいいあたたかさになった頃に口をついて出てきた言葉だった。けれど、彼にはいつもの軽口に聞こえたのかもしれない。
彼の顔を見上げてみると、ふいに地下牢の薄暗さに気づいた。
現実がふと入り込んできたようで、私は咄嗟に彼の顔だけを見つめた。
セ「……何だ」
暫く見つめあった後、彼は我慢出来なかったように言った。
私は口を開きかけた。しかし、今日だけは「好きです」の4文字が出てこない。
何を言おうか迷っているうちに曲が終わってしまった。だが、私も教授も手を離してはいなかった。
『……あの』
言葉が出てこない。教授がじっとこちらを見下ろしているのを感じた。
『どうしましょうか』
たっぷり間をとって出てきた答えはそれだった。
教授は鼻で笑った。彼はいつもの様子ではない私が面白くて仕方がないようだった。
セ「お前、その下手なダンスを人前で披露するのか。しかもホグワーツの代表生として」
私は顔を上げた。
セ「……もう1曲くらい踊っても罰は当たらんだろう」
彼の声がいつもよりずっと柔らかい気がした。私はふっと笑った。彼の口元も、ほんの少し緩んだように思えた。
そうして、私たちはまた身を寄せた。
私たちの未来から顔を背けて。
──────
談話室に戻ると、まだハリーとロンがいた。私は何となく、さっきのことがバレないかどきどきとした。
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ユーレイ(プロフ) - 羽音さん» メッセージ、イラストともにありがとうございます！楽しく拝見させてもらいました。自分の小説からイラストまで書いていただけるなんて本当に嬉しいです。ありがとうございます！ (2019年6月1日 23時) (
レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
ユーレイ(プロフ) - mikittyさん» 素敵なコメントにこちらこそニヤニヤしました……この焦れったい感じが書くのが楽しくて、どうしても長引かせてしまいます笑 (2019年6月1日 23時) (レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
羽音(プロフ) - メッセージに書いていたURLです！→http://uranai.nosv.org/img/user/data/0/9/a/09ad2710a06e0237527c6512112dc071.png (2019年5月31日 21時) (レス) id: d257d5a444 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 更新されているとニヤニヤしちゃうくらいに好きです…お互いに焦れったい感じがたまりません！セブルスという人物をとても細かく丁寧に描いている素晴らしい作品です。これからも楽しみにしています！ (2019年5月31日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
ユーレイ(プロフ) - パンジーさん» 空きコマのお供にしてもらえてよかったです！！(！？) さらに面白いと思って貰えるような展開にできたらと思ってます。楽しいコメントありがとうございました！ (2019年5月30日 21時) (レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：O
| 作成日時：2018年10月23日 12時
