rokuju-go ページ16
私は教授の部屋を出ると、談話室に戻る気も起きなくて、自室に飛び込んだ。
すぐ隣の部屋に彼がいるはずなのに、まるでずっと遠くにいるみたいに感じる。
私はベッドに横になって、ぼうっと天井を眺めた。
ク「ひどい顔ですね」
『……いつからそこにいたの、クィリナス』
ク「先程から。貴女、ひとりで泣いていたから気づかなかったんでしょう」
そう言われて、私は初めて涙が頬を滑り落ちたのに気がついた。
急いでそれを拭って、彼に背を向ける。
『クィリナスには関係ないよ』
ク「関係ありますよ。貴女たちのような臆病者と一緒にしないでください」
彼の痛烈な嫌味に、私は思わずふっと自分を嘲った。
臆病者──確かに、クィリナスの言う通りだ。
『……そうだね』
私が言うと、彼はため息をひとつついて、ベッドに腰掛けた。ギシリと気だるげな音がする。
『鷲のあなたの方が好きだよ。殆ど黙っててくれるもん』
ク「なら、このままでいますね」
人間の姿の彼が、あてつけがましく答えた。
私は暫く黙ってから、口を開いた。
『きっと、突き放して正解だったんだよ。私と教授は最後まで絶対に分かり合うことはないんだから』
クィリナスに言ってるんだろうか。……それとも、私自身に言い聞かせてる？
私はわざとらしく『あーあ！』と吐き出せてごろんと寝返りをうって、彼と目を合わせた。
『ねえ、教授って良い人じゃないよね？』
ク「正確に言えば、人がなってませんね。子どもを目の敵にしたり、あからさまな贔屓をしたり」
私は声を上げて笑った。
『そうだね。……人に対してちゃんと深く関わろうとか、する人じゃないはずなんだよ。多少は、何かのはずみで、奇跡的に優しくしてくれてもさ』
ク「貴女に対して相当つっこんで聞いたんですね」
彼が心底面白そうに笑うので、私は口を膨らませた。
彼は笑い終えると、やけに静かな声で言った。
ク「珍しい」
私は黙った。それから、小さな声で言った。
『そうだね』
正直、セブルス教授の人間性は最低最悪だ。性根は拗れているし、情なんてあるにしても雀の涙程度。
ただひとつ、最も偉大なのは、彼はひとつの愛を守り抜いたこと。
ク「そんな彼のことが好きなんでしょう？」
私は大きく頷いてから、肩を竦めた。
ク「馬鹿みたいに泣くほどに」
『ほっとけ！』
クィリナスの背中を蹴り飛ばす。
彼は「乱暴ですよ！」と怒ったが、泣き止んだ私を見ると、安心したように微笑んだ。
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黒金黒金(プロフ) - わーーーーめっちゃ面白かったです！！ (2022年5月30日 14時) (
レス) @page13 id: cd86d9f02f (このIDを非表示/違反報告)
ユーレイ(プロフ) - まちなか有栖さん» うわ〜〜良かったです！笑、私もまちなかさんのコメントいっつも嬉しいです…… (2017年10月7日 16時) (レス) id: 19fb53cdaa (このIDを非表示/違反報告)
まちなか有栖(プロフ) - そんなことはないですwレスが来るたびに嬉しくって嬉しくってw更新頑張ってください!!! (2017年10月5日 19時) (レス) id: 7a9cf76150 (このIDを非表示/違反報告)
ユーレイ(プロフ) - まちなか有栖さん» いや！私こそいちいち返信して迷惑かなと思ってました…笑、まちなかさんのコメントとっても嬉しいので大丈夫ですよ笑 (2017年10月5日 8時) (レス) id: 19fb53cdaa (このIDを非表示/違反報告)
まちなか有栖(プロフ) - もう感想送りすぎて迷惑じゃないかと思っているこの頃ですww更新お疲れ様です!!話したいことが気になりますね...。更新頑張ってください!! (2017年10月4日 15時) (レス) id: 7a9cf76150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：O
| 作成日時：2017年7月20日 19時
