【QK】ソーダフロートドリーマー【短編集】

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「すみません、７番のグループってここですか？」
「あ、はい。そうですよー」

かけられた声に、聞き覚えがありすぎた。
推しの——福良さんと、よく似た声、である。

…いやいや、待て待て。一旦落ち着こう。

友人がさらっと返すのを遠くに感じながら、ドッドッと響く心音を抑えるように手を胸に当てる。
というか、声くらい似ている人、たくさんいるよ。うん。

テーブルにつきながら挨拶を交わす二人は、両方男性で、聡明そうな見た目をしている。
福良さんに似た声を持つその人は、白いニットを着ており、眼鏡をかけている——好青年を絵に描いたような人だった。
こちらの目線に気付いた彼は、にこっと人好きそうな笑顔を向けてくれて、何だか心がぎゅっと掴まれた気分である。

これから一時間程チームとして動くのだから、自己紹介をしようか、という話になった。
私から時計回りで名前を言っていったら、偶然にも男性の片方と名字が一緒と言うことが判明し、では皆名前で呼ぼうかという流れに。
最後に回ってきた順番で、もう一人の男性が少し迷った後、名乗った。

「えーと、じゃあ、拳です。よろしくお願いします」

その後の情報で全員の年齢が同じということも分かり、ゲームを共にするのに素晴らしい関係性が序盤にして築けたのだった。


＊＊＊


脱出ゲームが始まって、それぞれが散らばった謎を整理していく。
ここで驚いたのは、拳くんのひらめきと計算スピードの速さだ。

「これとこれが重なるから、こっちの情報もう一回確認してみよう」

私と友人は、ほぼ情報を確認する程度で、「なんだかすごいことになっている」とお互い目を見合わせた。
最高難度であるこの脱出ゲームにおいて、スピードは一番大事な部分である。
とにかく、彼に置いていかれないように、そして少しでも役に立てるようにと情報整理に精を出す。

恐らく最後の謎であろう問題を解き終わった時、友人がようやくゆっくり椅子に座った。

「いや、まじで何者？拳くんゲーじゃん」
「あはは、ごめん、つい楽しくなっちゃって」
「俺、いなくても良かった説あるな」
「いや、あの問題はお前がひらめいてたじゃん」

拳くんに連れられてきた男性の方は、初めて脱出ゲームに触れたと言うことで、そのスピード感に遠い目をしていた。
それでもしっかりフォローしていく拳くんは見た目通りの好青年だ。

声が推しに似ているというだけで、こんなにドキドキしているなんてちょっと申し訳なくなって、目線を下げる。

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