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よんじゅーきゅう。 ページ3

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『はーい、あれ?クルーウェル先生…どうしたんですか?』



自室に戻ることなく、そのままAの部屋を訪れて扉を軽く叩いた。
出てきたAは、帰ってすぐ風呂に入ったのか、髪を纏めていてルームウェアに着替えており、あの日嗅いだ甘い香りがした。



「特に用事はない、が…可愛い仔犬の顔が見たくなった」

『ふふ、愛犬家のご主人様ですね』



あがって行きます?と提案されたが、考えてみたら初めての彼女の部屋だ。
彼女の香りが漂うこんな部屋にいて、…大丈夫だろうか。



『…せんせ?』



中々入らずにいたAが、首を傾げて見上げてくる。
お気に入りの仔犬の純粋なお誘いを、無下に断るのは心が痛む。

耐えろ、デイヴィス・クルーウェル。
教師として生徒の様子を見に来ただけだ。

不思議そうに見上げていたAの頭を撫で、招かれるまま部屋に入った。



『なんか、クルーウェル先生と私の部屋アンバランスですね』

「確かに…俺の部屋とは真逆だな」



年頃の女子らしく、白やピンクが目立つAの部屋。
センターテーブルの前のソファに座る白と黒と赤を纏った自分は、自分でもアンバランスだと思う。

Aも俺に紅茶を出して横に座る。



「この間の魔法史のテスト、学年トップだったらしいな」

『そうだったんですっ!同率ですけど…』

「職員室でもトレイン先生が褒めていたぞ」



大きく振られる尻尾の幻覚が見えてきそうな程嬉しそうに、目を細めてにこにこと笑うA。

…ああ、この笑顔が見たかったのだ。



「…Come,A。いい子の仔犬には、ご褒美にクルーウェル様も褒めてやろう」



体をAの方に向けてそう言えば、満面の笑みで飛び込んできた。

警戒心の無い仔犬だ、と少し心配にもなるが、信頼してくれているのだろうと考えたら悪い気にはならない。

背中に回された細く頼りない腕も、自分の顎下にある小さな頭も、首元を擽るふわふわの髪も、可愛くて堪らない俺は、中々末期だと思う。



『なんか最近クルーウェル先生にこうしてもらうの多いですね…』

「クルーウェル様じゃ不満か?」

『全然!…クルーウェル先生の匂い落ち着きます…』



くん、と首元に鼻を寄せるAに、理性を揺さぶられた。
これを何も悪意なくやってくるから、本っ当に質が悪い。






雑念を振り払うように、無理矢理思考を変える。




…そうだ、明日からの事をAに伝えなければ。
一番大事な事をすっかり忘れていた。

ごじゅう。→←よんじゅーはち。



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うち - 早く更新待ってます (2月3日 21時) (レス) @page13 id: ea351afd6e (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - えええ!?こんなところで終わる!?アニメとか漫画とかみたくめちゃくちゃ気になるとこで終わらせるじゃないですかあ!?、、、続き、続きをどうぞお恵みください((( (12月27日 10時) (レス) @page13 id: 89604d43a6 (このIDを非表示/違反報告)
アビスで分散(?) - めっちゃ気になるとこで終わってるやん…あれ作者さんもしかして確信犯? (2023年3月25日 8時) (レス) @page13 id: 0614e5eebb (このIDを非表示/違反報告)
無地(プロフ) - ここで終わるか!!、って声出ちゃいました続きを何卒何卒…… (2023年3月25日 1時) (レス) @page13 id: 49d25cb47a (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - つづきいいい (2023年3月11日 11時) (レス) @page13 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みる | 作成日時:2020年10月26日 14時

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