にじゅーよん。 ページ26
クルーウェルside
キングスカラーから渡されたAは、いつもより熱を持っていて、眠りながらも時折辛そうに声を漏らしていた。
なるべく振動を与えないよう歩きながら、Aの自室へ足を運ぶ。
その途中で、ふと思った。
できることなら彼女の部屋に入るのは避けたい。
ただの生徒ならともかく、特別目をかけている彼女だ。
それにAも学生とは言え女性だ。
…何か見られたくないものでもあって、怒られてしまったら。
少し女々しい考えが浮かんできて、結局いつかのように自分の部屋にAを寝かせることにした。
騒ぐであろうグリムはトレイン先生に引き取って貰った。
そっとベッドに降ろして毛布をかけてやり、椅子に腰掛けAが目を覚ますのを待つ。
『ん…くる、うぇる先生…?』
「ああ、目が覚めたか…。いつからだ?」
ゆっくり目を覚ましたAに尋ねるも、隠していたことを咎められると思ったのか、口をきゅ、と結んでしまった。
そっと頭を撫でながら、もう一度聞く。
「大丈夫だ仔犬、怒らない。いつから体調が悪かった?」
『……け、さ…』
自分で怒らないと言ったものの、つい、何故早くに言わなかった、と言いたくなった。
寸でのところで飲み込んで、そうか、とだけ返して、少し離れて濡らしたタオルと水、そして解熱剤を持って戻る。
薬を渋るAを宥めて何とか飲ませ、一人でゆっくり休ませた方がいいと考え、何かあったら呼べ、とだけ伝えて去ろうとした。
『やだ…』
「どうした?」
『…いかな、で…』
ああもう、この仔犬は。
撫でていた頭から離そうとした手を弱々しく握り、熱に浮かされ潤んだ瞳を向けてくる。
そうしてやりたいのは山々だが、何かしでかしてしまったら、と考えたら首を縦には振れない。
「……隣の部屋にいるから」
『…やだぁ…』
再度離れようとすると、熱のせいで涙腺が脆くなっているのか、Aの目からぽろ、と涙が溢れた。
さすがに彼女に泣かれると、俺も少し慌ててしまう。
「!…A、泣かないでくれ…」
『ぐす…ゆめ、みるからやだ…っ』
体調を崩している時は、確かに夢見が悪いと聞く。
Aが嫌がる夢、といったらひとつしかないだろう。
ぐす、と鼻を鳴らして目を擦るAに行くなと言われてしまえば、俺が諦めるしかなかった。
「はあ……分かった」
再び眠ったらこの場を離れよう、と、先程まで腰掛けていた椅子に座り直した。
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青藍(プロフ) - 最初は国の王女だったと思うんですけど途中から女王になっているのは何故ですか?どちらが正しいのでしょうか、見間違いだったらすみません (2022年5月21日 1時) (レス) @page50 id: 2e61a566e8 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 8ページ 本当の彼女自信 自信 ではなく 自身 ではないでしょうか? (2021年2月15日 23時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
萌葱(プロフ) - みるさん» そうですね笑笑 (2020年10月26日 16時) (レス) id: aca7e42382 (このIDを非表示/違反報告)
みる(プロフ) - 乃亜さん» 処刑までのカウントダウン始まりました笑 (2020年10月26日 14時) (レス) id: c52392d14b (このIDを非表示/違反報告)
みる(プロフ) - イヴさん» 果たして監督生はどうして情報をもってるのか…続編でお待ちしてます!! (2020年10月26日 14時) (レス) id: c52392d14b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みる | 作成日時:2020年10月16日 1時