諸泉尊奈門の手記 ページ10
タソガレ領地で、生まれ故郷のミソギ村を度々襲う暴れ湖、黄昏海。
その湖を鎮めるため現れた神子、A。
彼女は別の世界?時代?から来たようで奇妙な着物をまとっていた。
この世界についてほとんど何も知らず、一人では何もできなかった。(冗談抜きに火起こしすら)
その手は炊事や農作業など一度もしたことのない
タコ一つない綺麗な手だった。
まるで赤子か姫様のような娘に興味がわかないわけがなかった。
彼女は私のことを頼っている。
何でも友人に顔が似ているらしい。どれくらい似ているのか尋ねたら、鏡に映したようにそっくりだという。それは流石に盛っているだろう。
まあ、とにかくとっかかりとしては良かったみたいで
一週間もたつ頃にはすっかり打ち解けた―――ように思う。
村人とも少しずつ交流している姿を見かけた。ここでの生活に慣れてきたんだろう。
湖の懐柔法についてはまだ掴めていないが、日夜湖と巻物を調べ研究している。
しかし中々上手くいかず、煮詰まっている。
何か手伝ってやりたいが、どうしたらいいのやら。
――ひらめいた。忍務に同行させよう。
今回の忍務はとある人物の尾行。特に危険な内容ではない。
ただ町に出るだけだ。
よし、気分転換くらいにはなるだろう。早速誘ってみよう。
――――
芝居小屋で喜劇を見た。とても楽しんだようで安心した。
尾行の忍務としては得たい情報は既に得たからあとは町を散策するのを楽しもう。
そういえば朝から連れ出してしまったから腹が減っているはずだ。私は彼女をうどん屋に案内した。
美味そうにうどんを頬張る神子に思わず顔がほころぶ。
じっと見つめてしまっていたらしい。不審に思った彼女が顔をあげた。
その顔に影がよぎる。友人と重なってしまったのかな。
何とか気分をあげてやりたくて、女子受けしそうな簪屋に向かった。
色とりどりの簪を眺め、笑顔を取り戻した彼女にホッとため息をついた。
彼女に気づかれないように一挙手一投足に集中していると、一つの簪が気に入ったのか
一瞬だけ反応を示す。
しかし私に遠慮しているのか口に出すことはなく素知らぬふりをしている。
その様子がいじらしくて、こっそり簪を購入してしまった。
いつ渡そうか。
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ぱんだれ(プロフ) - 樹村ナツカさん» はじめまして。コメントありがとうございます。すごい励みになりました!これからも物語を作っていく予定なのでよろしくお願いします! (2018年6月24日 0時) (レス) id: 0f1bb45ad6 (このIDを非表示/違反報告)
樹村ナツカ(プロフ) - はじめまして。すごく面白かったです。素敵なお話をありがとうございました! (2018年6月23日 20時) (レス) id: d6fcb4e314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱんだれ | 作成日時:2018年5月26日 14時