一縷の望み ページ16
Aが湖にのまれてから一週間弱。捜索は打ち切られていた。
湖の水は全てポンプ車で吸い上げられ
2日間続いた必死の捜索もむなしく、彼女はどこにも見つからなかったからだ。
｢もう、、｣
捜索隊も、警察も、友人すら諦めの言葉を紡ぐ。
みんながAのことを諦めていた。
ただ1人、尊奈門を除いては。
――――
捜索が打ち切られて以来
尊奈門は何か関わりがあるのではと伝説を必死に調べた。
そんな時、事件当日に湖へ来ていた男を見かける。
あの日と同じく真っ黒のシャツを着て、左目に眼帯を付けている
特徴的な格好なのですぐにわかった。
何かつかめないかと、尊奈門は藁にもすがる思いで男に声をかけた。
尊奈門あの、、っ
男は尊奈門がこれから進学予定の大学で民俗学を研究している教授だった。
以前から黄昏海伝説について調べていたという。
男は尊奈門の必死の頼みに心を打たれたのか
はたまた研究の糧になると思ったのか、
尊奈門の捜索の手伝いをしてくれることになった。
教授600幾年前、湖の神子は突如湖の底から現れたとされている。
俄には信じがたい話だが君の彼女のAさんが湖の神子として選ばれたと仮設を立てよう。手記に出てくる神子の名前もAだし、偶然ではないだろうね。
尊奈門かっ、彼女じゃ、、
教授がにやけながら言うので慌てて反論するが
人差し指を唇の前に立て遮られる。
この人はいまいち真剣なのかふざけているのか分からない。
教授曰く、発見された当時の手記によると神子は村の危機を二度救ったらしい。
一度目は湖の氾濫を治めて、二度目は戦を鎮火させた、と。
教授は尊奈門の不満げな態度などものともせずに話し続ける。
教授―――ところが戦を鎮火させるのにはとても大きな力が必要だったみたいで
神子は力を使い果たし再び湖に吸い込まれていった。
尊奈門吸い込まれた!?伝説じゃ消滅したって、、
教授それは今までの伝説ね。
今じゃ神子は村に初めて現れた時と同じように湖に飲み込まれていったことが分かった。
尊奈門それじゃあ、、
希望が見えた。
確証はないが、戦を鎮火させた後、Aは再びこの地に戻ってくるかもしれない。
――――
尊奈門は毎日毎日、水の上がった、元通り干からびた湖跡地を訪れる。
「keep out」のテープ越しに跡地を眺め、待ち続けた。
Aが戻ってきた時にちゃんと迎えられるように。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱんだれ(プロフ) - 樹村ナツカさん» はじめまして。コメントありがとうございます。すごい励みになりました！これからも物語を作っていく予定なのでよろしくお願いします！ (2018年6月24日 0時) (
レス) id: 0f1bb45ad6 (このIDを非表示/違反報告)
樹村ナツカ(プロフ) - はじめまして。すごく面白かったです。素敵なお話をありがとうございました！ (2018年6月23日 20時) (レス) id: d6fcb4e314 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱんだれ | 作成日時：2018年5月26日 14時
