眠れぬ夜と自覚する朝 ページ8
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「うー……うー……」
誰だ。
智先生の休日に入り込んだのは、誰だ。
よりによって、俺の誕生日に彼をぶんどっていったのは、どこのどいつだ！
誰ともわからないヤツを相手に、
憤りと悔しさを抑えきれなくて……全然眠れない。
仕事でとても疲れてるはずなのに、
その夜は、一睡もできずに時間だけが経っていった。
＊
「うわっ！翔ちゃん ぶっさいくー！！」
次の朝。
和にそんなことを言われて大袈裟に飛びのかれても、俺は何も反撃できなかった。
身体はフラフラなのに、
気持ちだけはブルブルと奮えてコントロールができない。
そんな状態だった。
「翔？ 大丈夫？」
「ああ」
朝食もほとんど食べられなくて、
でも出勤時間がやってくるからと準備をしている俺に、姉さんが心配そうに声をかける。
「今日は私が和を連れていくわね」
「え！？ いや！！待って、俺が行くよ！」
「そんな状態じゃ無理でしょ」
「行く！絶対行く！！ 大丈夫だから！！」
「……そう？ 気を付けてね」
「わかってるよ」
彼に会えないなんて……尚更おかしくなりそうだ。
「はぁ〜」
今さらながらに、根深く…そして激しくなっている『恋』を自覚した。
俺、マジで……智先生のことが、すげぇ好きになってる。
「やっべぇ…… 完全にホ モじゃないか、俺」
父さん、母さん。
どうやら俺の血を引く孫の顔は見せてやれないようです、ごめんなさい。
孫は、もう和がいてくれるからいいですよね。
居間でくつろいでいる両親にこっそりと頭を下げた。
スーツのジャケットを取りに自室へ戻ったときのこと。
「？」
充電器を指していたスマホが、メール受信を知らせてチカチカと小さな光を放っているのに気づいた。
こんな、朝から誰からだろう？
「さっ…智先生！？///」
『おはようございます』という文字に、「おはようございます！！」と全力で応える俺。
「翔ちゃんがおかしい」
廊下で俺の声を聞いたらしい和が、呆れていた。
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