寝耳に水 ページ7
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和を寝かしつけてきた姉さんが、居間に戻ってくる。
ほぼほぼ食べ終わった俺の夕飯の様子を見て、温かいお茶を淹れてくれた。
「ご飯のおかわりは？」
「もう十分だよ」
こうして居心地がいいから、結婚しなくてもこのままでいいやって思っちゃうんだよな。
そんな、見え透いた言い訳をしてみる。
……本当はそうじゃないかもしれないって、気づき始めているけど。
「そういえば」
コトンと湯呑を炬燵テーブルに置いて、
姉さんは、自分のお茶も注ぎながら思い出したように言った。
「２５日って月曜日でしょ？」
「うん」
「翔は、お休み…じゃ」
「ないよ」
「そっか。そうよね
さっきも誕生日に予定はないって言ってたもんね」
そんなため息ついて、しみじみ言わなくったっていいじゃないか。
地味に傷つくじゃん。
「何？それがどうしたの？」
「ううん、何でもない」
「気になるじゃん」
姉さんは、ふぅっと湯呑から出る湯気を揺らせて、一口飲んだ。
「その日って保育園がお休みなのよね」
「あ…ああ、そうだったね」
その前の土曜日が、餅つき大会を兼ねた保育参観なので代休になるのだと聞いた。
だから、智先生をどこかに誘えないかと思って……たんだけどな。
「今日、お迎えに行った時に 智先生とちらっとお話したんだけど」
「えっ？」
智先生と聞いて、耳がダンボになる。
「その日に久しぶりに遠出するんですって」
「Σええ！？」
遠出って？！誰と！？
俺が誘えないうちに、いったい誰が智先生の休日を！？
「なによ、びっくりするじゃない」
「……ああ、ごめん」
俺の驚き具合に姉さんが、湯呑をひっくり返しかけた。
少し零したお茶をテーブル布巾で拭きながら、苦笑する。
「あなた、智先生と友達になったって言ってたじゃない？
だから翔と一緒なのかなぁって何となく思ったんだけど、違ったのねぇ」
「……う…ん」
つい浮かせしまった腰を落として、胡坐をかいて座り込んだ。
そして、よそのヤツに先を越されたことにショックを受けたまま、湯呑を手にした。
「ぅあっちー！！」
「何してるのよ(笑) 気をつけなさい」
小さい子の面倒を見るように姉さんが笑う。
俺は、心ここに非ずの状態だった。
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