５歳児との攻防戦 ページ6
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「ヘタレ翔ちゃんが帰ってきた〜(笑)」
「うっさい」
残業を終えて家に帰ると、
居間で、風呂上りの和が姉さんに髪を乾かしてもらっていた。
俺を見て、からかうように笑う和にむすっとしながらネクタイを解く。
「翔、おかえりなさい。晩御飯は？」
「ああ、今からもらうよ」
「じゃあ、用意するわね」
姉さんは、湯冷めしないようにと和を炬燵に入れ、台所の方へと消えて行った。
車通勤とはいえ、駐車場から家に入るまでの外気だけで、十分冷え切った身体。
それを温めるために炬燵の足を突っ込んだら、
和が、カタツムリのように首まで炬燵に入り込んで、俺の足を蹴ってきた。
「翔ちゃん」
「なんだよ」
「さとしはオレのもんだからな」
「は？」
「さとしはオレのなの」
何言ってんだよ、こいつは。
「バカ言ってんじゃないよ」
ふんっと鼻で笑ったら、
今度は容赦ない力で蹴り飛ばされて、さすがに痛かった。
「痛いだろう！！ 和(怒)」
「バカっていった！」
「だって、そうだろが。
『オレの』ってなんだよ」
「さとしが大好きだから、
ずっとずっといっしょにいられるように、オレのコイビトにするんだ！！」
「…………やっぱりバカだな」
ゲシッ！！
「いてぇって！！(怒)」
「コイゴコロをバカにした翔ちゃんが悪い！」
「恋心だ？ ５歳のガキのくせして生意気言いやがって」
「翔ちゃんのあほ！！」
ガンガンと蹴ってくる和。
そのの小さな足を上から押さえつける俺。
そんな攻防を炬燵の中で繰り広げていたら、
姉さんが夕食を持ってきてくれた時には、
炬燵は元の場所から曲がってしまってるし、俺と和は汗だくになっていた。
「あなたたち何やってるのよ」
呆れた様子で姉さんが炬燵を元に戻す。
和は子供の特権で姉さんに泣きついていき、
俺はぐしゃぐしゃになったシャツとズボンにも苛々してそっぽを向いた。
「翔も大人げないわねぇ。
もうすぐ３４にもなるのに」
「…………」
「そうだわ。 翔、誕生日はどうするの？
誰かと会う予定でも…？」
「………ない」
「あら…」
「ごめんなさい」と笑う姉さん。
その腕の中で「ヘタレだからムリなんだよーだ」と和がイケズな物言いでとどめを刺してきた。
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