Last 二人だけの約束 ページ26
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「サクラってなんだよ！」
俺と智くんの会話を半ば茫然と聞いていた和が、
智くんの顔を両手で押さえて、強引に自分へ向かせる。
「昨日、翔くんと見に行ったんだよ」
「あれ、はるの花じゃん」
「だと思うだろ〜！ あるんだなー、これが。
ちょっと遠いけど」
子供相手に得意げになるところも可愛い……///
それから、沖縄は「ちょっと遠い」ではないと思うよ、智くん。
「ずるい！！ 翔ちゃんだけつれてくなんて！！」
「え？」
ま、まさか……。
自分もつれてけとか言い出すんじゃないだろうな！
「さとし！」
「何？」
「翔ちゃんのこと好きなのか！？」
えぇ―――ッ/// それを聞いてしまうのか！？
ちょっとまて、心の準備がっ…///
「好きだよ？」
「！！」
さ…智くん！！////俺も好きです！！超好きです！！
叫びそうになるのを、両手で口を押えて呑み込む。
「むー オレのこと大好きっていったくせにっ」
「和も好きだよ？」
ああ……やっぱり。
そうだよな。
子供の和も、大人の俺も同じレベルって言うか、
同じ部類の好きって意味なんだな。
「じゃあ、オレもつれていってよ！ そのサクラのとこ！」
予想通りの展開に、俺は頭を抱えた。
同じ並びの好きならば、智くんが和のおねだりを聞かないことはないだろう。
きっと「いいよ」なんて優しい笑顔で応えてしまうに決まってる。
せっかくの二人だけの約束が……。
大きなため息が出そうになって、
苦しくなった胸の中にいっぱいに息を吸い込んだ時だった。
「それはダメ。
翔くんと『二人だけの約束』だからな」
え…！？
智くんの思わぬ返事に、俺は息を詰まらせて咳き込んだ。
「げほげほげほっ！」
「翔くん？ 大丈夫？」
「げふん……///」
そのあと、どんなに和が駄々をこねても、智くんは「ダメ」と譲らなかった。
「いってらっしゃい」
ついには泣きだしてしまった和を苦笑しながら宥めて、
手を振ってくれる智くんに「いってきます」とその場を後にした。
『二人だけの約束』が有効ならば
いつか…
いつかは貴方に想いを伝えられるときがくるかもしれない……？
そんな期待に胸を躍らせ、俺は車に乗り込んだのだった。
[了]
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