次の朝 ページ24
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次の朝
俺と智くんが一緒に出掛けたことに気づいていた和は、
ものすごく不機嫌で、ひとことも口をきかないほどだった。
でも、言い訳するようなことはないから、俺もかまわずにいる。
姉さんも和の様子をわかっていたけど、何かを察しているようで、
一度だけ俺の背中をポンポンと撫でて、困ったように笑いかけただけだった。
「いってらっしゃい」
いつもの朝と同じように、姉さんに玄関で見送られて、和とともに車へ向かう。
和は、ロック解除になったドアを自分で開けて、
スタスタと後部座席のチャイルドシートに乗り込んだ。
シートベルトをしてやるために上半身をくぐらせたとき、
「きのう」
やっと、和が口を開いた。
文句を言われるものだと思って、スルーして動作を止めないでいたら
「たんじょーび おめでと」
と言われて驚く。
「えっ」
やっとまともに顔を見た甥っ子は、
口はへの字に曲がったまま視線を背けていたけど、
単純に拗ねているだけのようだった。
「きのう いっこも翔ちゃんみてないから いえなかった」
「あ、ああ……そうだな」
朝早くから日が変わるまで出掛けてたからな……智くんと。
そうか。
結局のところ…可愛い甥っ子に、頬が弛む。
「だから、きのうだけは さとしとのデートゆるしてやってもいいよ」
許すという表現にカチンときたけれど、反論するのも大人げないし、
何よりも、昨日の旅が俺の気持ちに余裕というものを与えてくれてくれていた。
「お前、ホントに好きなんだなぁ」
「あたりまえじゃん！」
「ああ……
俺も好きだよ、智くんのこと」
「！」
「すごく……好きだ」
げしっ！
和が振り上げたつま先が、ちょうど俺の脇腹にささる。
「イッテェ―――！！」
蹴られた箇所を抱えて車外に飛び退いた俺に、
和が通園リュックを投げつけてきた。
やっぱ怒らせたか(笑)
「『せんせい』ってよべよ！
『くん』なんてよぶな！」
「Σそっち！？」
俺の告白のことはいいのかよ！？
「翔ちゃんがさとしのことを好きなんて、
とっくに知ってるってか、丸わかりなんだよ。
潤だって言ってたもん」
「…………」
本人には、まったく気づかれてないけどね。
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