好きな人 ページ23
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『ずっと友達でいよう』
彼の言ったことの意味が、そういうことだとわかってる。
それでも、ずっと一緒に
己が生まれてきたことを共に喜び合えるのならば……
ひたすらに 貴方を愛し続けられる
そんな自信をいだいた。
「智……」
フロントガラス越しの景色が、じわっと滲む。
すっかり涙もろくなったのも、ひとつ歳をくっちまったせいなのかな。
ぐいと袖で拭って、ハンドルを握り直す。
「気合いいれろよ、俺！！」
真夜中の高速道路。
トラックの合間を縫って、家へと帰った。
＊
「おかえりなさい」
「まだ起きてたの？」
玄関の鍵を開けて入ったら、居間の障子を開けて姉さんが迎えてくれる。
「寒かったでしょう。
早くおこた入りなさい」
小さな子供にいうような言葉に、つい笑ってしまった。
「俺、何歳になったと思ってるの？」
いつものように俺からコートを受けとった姉さんは、少し拗ねたような表情を見せる。
「いくつになっても翔は翔じゃない」
「………」
「なによ？」
「いや、親子だなぁと思って」
「どういうこと？」
和の…「さとしはさとしだ！」という堂々とした告白を思い出して、
俺の笑みは苦いものに変わった。
「友達の位置に甘んじていて、いつの間にか甥っ子にまんまとかっさらわれる
……なんてオチは、御免こうむりたいな」
なかなか玄関から動かない俺に、姉さんが再び声をかける。
「何をブツブツ言ってるの？
あなた、すっかり老け込んだわね」
「それ、ちょっとひどくない？(笑)」
居間は、石油ストーブの匂いと温かさで包まれていて、
炬燵はぬくぬくとして、足の凍えを溶かしてくれた。
「明日も仕事なんだから、早く寝なさいね」
そのためにだけ起きててくれた姉さんに感謝しながら、
いつまでも弟に優しい…いや、優しすぎるこの人には
俺の気持ちを知ってほしいと思ってしまう。
「姉さん」
「なあに？」
「俺……好きな人がいるんだ」
「え……？」
「この恋は叶わないと知ってるけれど……その人以外は考えられない」
「…………」
「……それだけ。
姉さんには、言っておきたくて」
姉さんは「そう」と微笑んで、俺の頭を撫でると
おやすみ…と、静かに部屋を出て行った。
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