ひとめぼれ ページ3
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どきり
心臓が強く跳ね上がった衝動は、全身に伝導した。
何が起こったのか自分でわからないまま、
俺はその人から目が離せない。
「さとしぃ〜♡」
和が俺の手を払い、勢いよく駆けだした。
「あ、おいっ！」
もうすぐ公園の敷地内という場所だったけれど、道路沿いのそこは車が横を走る。
危ないと思って追いかけようとしたところで、
近くの誘導係の男性が赤いポールで周りの車に注意を促してくれた。
迅速な対応、ありがたい！
でも……
「「和！！ 危ないだろう！！」」
……あれ？
叱咤の声がハモった。
厳しい声にびっくりして、和が足を止める。
俺よりも先に和に駆け寄ったのは、
さっき目にした……菱形模様の浴衣を着た黒髪の若い男性だった。
「和」
勢いよく和の腕をとったその人は、綺麗な眉を吊り上げている。
それを見た和が、うっとつまって涙目になるのがわかった。
「………。わかってるよな？」
怒るというより、確認する言葉。
でも、危ないことをしたことを自覚させ反省を促すという重さを持ったそれに、
和は、こくこくと頷いてぽろりと涙をこぼした。
「わかってればいいんだ。次からは気をつけろよ。
ああ、もう泣くな。
母ちゃんが着せてくれた、せっかくの浴衣が台無しになんぞ」
頭を撫でて、見せた微笑み。
「！！！！！！！///」
どっくん！！
また俺の心臓が跳ね上がる。
(て……天使、いや女神か…っ…///)
ばくばくとウルサイほど鳴り響く心臓から、血が逆流してるんじゃないだろうか。
顔からは、何かわからない汗がにじんでくるし、手が……足が……動かない。
「そういや 和、お前ひとり…なわけないよな？」
小さな身体をひょいと抱き上げて、きょろきょろっと保護者を探し始めるその人に、
和は、片手を彼の肩に、もう片方の手を俺の方へと指さした。
「！」
彼の視線が俺を捉える。
彼の瞳に映った自分に舞い上がりそうになって、
俺は、生まれて初めての感情に、ますます混乱するばかりだったんだ。
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