この日が終わるまで ページ20
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ずいぶんと深く眠ってしまった。
肩を揺さぶられて起きたら、もう彼の家の駐車場に着いていた。
「ごめん！」
飛び起きた俺に、ふにゃりと笑う。
「引っ張りまわしちゃったのはおいらだもん。気にしないで」
エンジンは掛けたままシートベルトをはずす彼に、
このまま帰るつもりなのだと察して、咄嗟に腕をつかんだ。
「もう少し、ここにいて！！」
寝起きで判断が鈍っていたとはいえ、つい本音の行動にでてしまい、
智くんだけでなく俺自身も驚いた。
消したはずの未練なのに―――。
「どうした？ 翔くん」
引き留めてしまったことの理由を、必死に検索する。
そして、車内のデジタル時計の数字を見つけた。
「あっ あと５分でいいから！」
「５分？」
「俺の誕生日が終わるまでだけ、付き合ってくれないかな！」
俺の言葉に、智くんの目が瞬く。
「ウソ…っ！？ えっ？ 今日が翔くんの誕生日だったの？」
「……実はそうなんだ」
今さらの告白に頭を垂れた。
「マジで？ 早く言ってくれればよかったのに。
おいら、何もお祝いできてない」
「いや、そんな…大したことじゃな……」
「大したことあるよ！」
智くんの腕をつかんでいた手を、逆に掴み返されてびっくりして顔を上げた。
ちょっと怒ったような顔をした彼がいて、
思わず「ごめん」と謝ってしまう。
「でも、今日はお祝いしてもらったみたいなもんだし」
「…………」
「生まれて初めてだったから……あんな綺麗な冬の桜を見たのは。
感動した。
だから……」
「翔くん」
「貴方といられて、あの桜を見て……
最高の誕生日だったよ
ありがとう」
今日のことを彼が後悔しないように、本心からの感謝を言葉にした。
じっと聞いていた彼は、
何か考えた様子を見せたあと、俺の手首を掴み直す。
何？って反応する前にぐいと思い切り引っ張られ、
傾いた体に、もう片方の彼の手が回された。
「まだ間に合う」
「えっ……」
そして智くんは……不自然な状態で倒れ込んだ俺の体を抱きしめだんだ。
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