帰路 ページ18
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１９時４０分。
俺の車が待っている空港に向かう 最終便。
往路と同じ エコノミーの隣同士の席に座ってシートベルトをする。
飛行機からブリッジが外されて、動き出す。
ああ、本当に終わってしまう。
ため息が出そうになった時、
ふわっと甘い香りが鼻をくすぐった。
「……っ……//」
続いて肩にかかる重み。
柔らかな黒髪がさらりと俺の首筋を撫でた。
「…………」
さすがに疲れたの…かな。
飛行機が離陸する前の振動や音が、俺には届かない。
他の音で聞こえない筈の、彼の寝息が耳をくすぐる。
すっかり気を許し脱力してもたれかかる智くんに、
どういう表情をしていいかもわからなくなって、反対側の手で顔の半分を覆い隠した。
ごまかすように、そのまま肘をついた姿勢になる。
沖縄の地から離れる飛行機。
俺も目を閉じ、
全部の神経でもって この至福の時を記憶に刻みつけることにしたんだ。
＊
「おいら……寝ちゃってた」
「うん、よく寝てたね」
着いてからもぼーっとした様子の智くんを見て、その可愛さについ笑みがこぼれた。
空港の駐車場に入り、俺の車を探す。
そんな俺の後ろをひょこひょことついてくる彼の頭は、どうやったら出来たのかわからない寝癖がついていた。
「おいらが運転するよ」
「いいよ。俺がする。
行きは、ほとんど智くんがしてくれたし」
見つけた車の後部座席に荷物を積み込む。
といっても日帰りだから、大きなものはないのだけど。
それから運転席のドアを開けたところで、
「睡眠とれたから元気だもん」
と、すぐ近くで彼の声が聞こえた。
「え……？ ぅあっ！///」
運転席に乗り込もうとした俺を阻止して自分が…と、俺のすぐ前に体をすべり込ませてくる智くん。
いきなりの行動に驚き、俺の体は固まってしまう。
「翔くんはあっちに乗りなよ？」
振り返った顔は……息もかかるほどの至近距離。
長い睫毛がまばたく音が聞こえるかとほどの密着状態で、俺はパニックだ。
「翔くん？」
「…………///」
「どした？」
「…………///」
「え？ マジでどうしちゃったの？」
「……っ……///」
「しょ……」
抑えきれない衝動で…… 貴方を抱きしめた。
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