……くん。 ページ17
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「翔……くん」
「！！//」
「そろそろ行こう？」
「……ああ、そうだね」
初めて呼んだ俺の名前に、はにかむ貴方。
ずるいよ。
苦しいよ。
…………大好きだよ。
「智……くん」
俺の声に嬉しそうにうなずいて、彼は立ち上がった。
「車に戻るよ」
「次はどこに？」
「また、桜を見に行くの」
「え？」
「車で通る場所があるから、そこに行きたいんだけど」
「わかったよ」
「せっかく沖縄に来てるのに、ゆっくり海を見てないね」
「ごめんね」なんて言いながら、それでも行き先は変えないつもりらしい。
愛しい貴方のペースに巻き込まれてる自分も楽しいから、それでもいいんだ。
心の中でそう応えて、笑ってみせた。
彼の運転で、
山のドライブウェイにある見事な桜並木も堪能してから、街の中心部に戻ってくる。
その頃にはもう日も暮れて、腹もすいてきた。
「翔くん、何がいい？」
「ガッツリ系かなぁ？」
「肉ってこと？」
「魚は昼に食ったし」
今日の朝では考えられないほどに、くだけた会話ができるようになっている俺たち。
本当に有意義な一日だったと感じていたら、
ここにいられるのはもうそんなに長くは無理な時間を時計で確認してしまって、旅のオワリを意識した。
「どうしたの？」
箸が止った俺に気づいて、智くんが首をかしげる。
なんでもないと首を振って、話題を変えた。
「桜が好きなんだね」
「そう…だなぁ。 ああ……うん、そうかも。
あまり考えたことがなかった」
こんなところまでわざわざ来てるのに、考えたことがなかったなんて。
つくづく面白くて……不思議な人だ。
知らなかった一面をまた見られた気がして、嬉しい。
「俺も気にいったかも」
「ホントに？ 嬉しいな」
んふふと笑って、ラフテーの最後のひとかけを口に運ぶ。
目で追った先の唇が艶やかに濡れていて、思わずこくっと喉が鳴った。
「うん、ホントだよ」
自分の小皿に目線を落として逃れる。
「じゃあ、また一緒に来ようよ 翔くん」
貴方の言葉に不意打ちを食らって……心臓が跳ねた。
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