なまえ ページ15
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だけど、この状況を投げ出すこともできない。
ヘタレと呼ばれても仕方がない自分に苦笑してから、深呼吸をして外に出た。
「大丈夫ですか？」
外で待ってた智先生に缶コーヒーを差し出される。
俺を気遣う優しい瞳に、どうしたって胸が騒いで……
「ありがとうございます」
缶コーヒーを受け取ろうと伸ばした手で、智先生の手を握った。
「櫻井さ…ん？」
戸惑う様子も……また、いいな。
全部、俺のモノにできるのなら……幸せなのに。
「これから旅行に行く『友人同士』なんですから、それやめませんか？」
「え？」
「翔って……呼んでください」
「あ…ああ、そう……ですね」
「俺も智って……呼ばせてください。
できれば、敬語もやめたいな」
「かまいませんけど…///」
もっと力を入れて手を握ったら、ほんのりと頬を染めて智先生が頷いた。
あまり人がいないＰＡとはいえ、いつまでも男同士で手を握り合ってるわけにもいかない。
缶コーヒーを手にして、痛む胸を押えてにっこりと笑ってみせる。
ごつっ
え？
目の前でカフェオレの缶が転がった。
慌てて拾い上げる智先生に合わせてしゃがんだ。
「どうしました？ 智先せ……じゃなくて、さ…ささ…///」
自分で言いだしたことなのに。
まともに名前が呼べなくなるかもしれないことを後悔していたら、
智先生が、くすぐったそうに笑った。
「なかなか難しい……かな」
「え？」
「子供たちには散々呼び捨てられてるけれど、
あなたみたいなイケメンに呼ばれると照れくさいです」
「……っ……///」
イケメンって……俺のことをそんな風に思ってくれるんですか。
照れくさいって……俺相手にも感じてくれるんですか。
ささいなことだけど、……やばい……嬉しい。
「ゆっくりでいいんじゃないですか？
今日一日ずっと一緒なんだし、そのうち自然と言えるかも。
お互い無理はやめましょう？
……友達なんですから//」
智先生はそう言って立ち上がり、凹んだ缶をポケットに突っ込む。
出遅れた俺は、しゃがみこんだまま彼を見た。
「はい……///」
見上げた智先生は、
俺より大きく見えて……
頼りがいがあるように見えて……
それでも可愛くて。
和や子供たちには、いつもこんなふうに見えてるんだなって思ったんだ。
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