それでも…… ページ11
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「それでも、男同士は結婚できな……」
「日本ではだろ？ ガイコクだったらできる！」
「お前、そんなこと よく知ってるね」
智先生が目を丸くする。
「オレが大人になったら、日本でもできるようになってるかもしんないじゃん！」
「そんな未来だと、おいらはジジィになってるわ(笑)」
「かまうもんか！ さとしはさとしだ！
いつまでも大好きなまんまに決まってる！」
「んふふ おいら 愛されてんなぁ〜」
撫でていた手をとめ、
大きく手を広げて和の小さな身体を抱きしめる智先生は、幸せそうに微笑んでいた。
子供だからとか、大人だからとか……そんなことは関係なくて、
自分の気持ちを素直に表現できる二人が、心底羨ましくて
俺は、何にも言えなくなってしまった。
「…………」
立ち尽くす俺を、智先生に抱きしめられた和が目を潤ませて睨んでいた。
なんだよ。
お前の方が、余程いい立場じゃないか。
なんで俺をそんな目で見るんだよ。
「あ……」
別の園児を送りにやって来た車のエンジン音に気づいて、智先生は立ち上がった。
「櫻井さん、出勤の時間は大丈夫なんですか？」
「……はい、いってきます」
「？」
はじめの勢いはどこへやら。
俺は肩を落として車へと向かう。
「和〜 ほら 和ってば。行っちゃうよ？」
和に声をかけて俺を見送れと促す智先生の声が背後から聞こえたけど、
和からの反応はなくて…
ちらっと振り返ったときに見たのは、智先生にしがみついたままの姿だった。
益々しょげた俺に気をつかって、
智先生が代わりに「いってらっしゃい」と手を振ってくれる。
きっと、和と喧嘩して落ち込んでるって思ってんだろうなぁ。
あなたを巡る戦いで５歳児に完敗したからなんて……言えるはずもないけれど。
朝のことで、これ以上のことは期待してはいけないと痛感した。
それでも……
どうしたって彼のことが好きだという想いが変わらないのも自覚して
「課長、お願いします」
その日の夕方、俺は年次休暇取得を願い出たのだった。
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