５〈side SHO〉 ページ5
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ぜぇぜぇと息を切らせて、草っぱらに仰向けに倒れる。
「今回は……これで終わりかなぁ」
頭の上で声がして、目を開ければ
飄々とした表情のままの彼がふにゃりと笑った。
一切息が乱れていないし、俺みたいな汗もかいてない。
「し…信じらんね……っ！ げほげほっ」
声を出したら、気道が引きつって咳き込んでしまった。
いや、信じられないと言うなら 俺自身も、だ。
塀を駆け上がり、ビルを超え、林の中を飛ぶように走り……
常人以上の能力でここまでやってきた。
いったい、この力は何なんだ。
「…………そっか
まだ、完全には ……戻ってないんだね」
俺の戸惑いを見透かしたように、彼の笑みが少し翳った。
それが何だか寂しそうで、思わず手を伸ばす。
「……っ……」
でも、呼ぼうと思った名前が思い浮かばなかった。
そんなとき
「ショウ……さん？」
俺のすぐ隣に倒れていた男が、もう体力を回復したらしく、起き上がってマジマジと俺を見ていた。
そして 俺の名前を呼んだ。
「お前、ジュン……か？」
櫻井翔としての記憶のポケットとは違う場所から出てきた何か。
そこにあった面影と名前を思い出して呼べば、嬉しそうな顔をして、握手をされた。
「へぇ イイ男になったじゃん ジュン」
「なんだよ、それ」
照れくさそうな表情は前世のものと変わらない。
「今、いくつ？」
「３１」
「マジで！？ 俺３３だぜ？」
８歳も年齢が離れ、弟のように可愛がってたジュンと、
現代では、たった２つ違いになったことを単純に驚く。
「俺とそんな変わんないのに、その体力の無さはないよ？ ショウさん」
「お前、生意気なこと言うようになったな〜(笑)」
握手した手で起こしてもらい、逞しくなったジュンの胸に軽くパンチした。
「少しは、前世の記憶があるようですね。
いや、思い出してきたと言った方が正しいか」
そんな俺たちに、木にもたれて腕を組んだ小柄な男が声をかける。
カラシ色のシャツは、俺たちと同様に草や泥で汚れていた。
その黒い瞳とほくろを見て あっと声をあげる。
「カズ？」
「正解」
すちゃっと二本の指を挨拶のようにあげて、ニッと笑う。
その顔に、ジュンも記憶が合致したようで ふふっと笑い返していた。
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