Last 〈side SATOSHI〉 ページ35
.
「まさか…それに３０年かかっちゃうとは思わなかったよなぁ」
朝日に照らされる街並みを眺めて、つい独り言が漏れた。
「３０年ってなぁに？」
寝起きのいいマサキが伸びをしながらにっこりと笑いかける。
「…… あんまり勢いよくのびたら落ちるよ？」
「だいじょ……」
ぐらっ
「あっ」
「うわぁ―――！！」
落ちちゃった。
おいらの頭上に青の星光が現れ、マサキに向かって光を放つ。
「！」
だけど、おいらは見たんだ。
しゃぼん玉みたいに薄っすらとしたものだったけど、
マサキ自身から緑色のオーラが発せられたのを……。
そのあとすぐに、おいらの青い光が、マサキをゆっくりと持ち上げて地上まで届けたけれど…
あれは、確かに……マサキの力。
「もう…… 力 使えるんだ……」
「あー びっくりしたぁ〜」
「……」
「なに？ なんかいった？サトちゃん」
「ううん」
「何をやってるんだ！」と早速ショウに怒られてるマサキを見下ろして
おいらは、ちょっと複雑な気持ちになりながら笑った。
力を蓄えるために、９つに分裂してしまった星光。
それをすべて集めれば あのときのような強い力を再び手にすることが出来る。
そして、今度こそ『黒の王子』を……。
「…………」
おいらの…本物の体が、動きを封じている『黒の王子』
５００年の間、その身を焔に焼かれながら、
何度も何度も再生を繰り返し、今もなお生きながらえているはず。
けれど、さすがのヤツとはいえ、その魔力はほぼ尽きかけているに違いない。
そんな『黒の王子』に、４人の力でトドメをさせば……
終わる。
青の焔にやつしたおいらの身体も、
『黒の王子』が倒れ、焔が消え去れば……きっとそこで。
「…………」
…………おいらは、生を終えることができるんだ。
「サトシくーん！ 朝食をもってきたよ！降りておいで」
「サトちゃーん、メロンパン好き？ 半分こしよーよー」
「アホですか。数あるんだから１つずつ食べりゃいいでしょうが」
「サトシ、コーヒー飲めるか？ 砂糖とミルクは？」
そのことを知ったら、４人は 何ていうだろう。
「メロンパン、おいら好き！ 砂糖もミルクも多めでお願い！」
それでも、いい。
今だけだとしても、
４人と再び出会えた幸せ。
それだけで、生きてきて良かったと
……おいら思うんだ。
[Scene 2 了]
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 496人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
