４ ＜in an old tale＞ ページ22
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約５００年前の戦場―――。
「サトちゃん！！」
「！」
敵の兵がサトシーラに向けた無数の矢が、大槍の一振りで薙ぎ払われる。
「マサキ！？ その傷で動いてはいけないと言ったはず！！ どうしてここにっ」
「これは最後の戦いになるかもしれないんだよ。
こんな傷ごときで へばってられないでしょ」
いつもどおりの笑顔で応えたマサキだったが、包帯から滲み出た血で、衣服も赤く染まっていた。
「だめ、マサキ！！ お願いだから戻って！！
その傷は、私の治癒の力も効かないのにっ」
「できない。
みんなが戦ってるのに、一人だけ安全なところで寝てなんかいられないよ」
雨のように降りかかる矢から、休むことなくサトシーラを守リ続けるマサキ。
その傷は一層悪化するばかり。
そんな二人のもとへ、紫色の光が飛び込んでくる。
「ジュ…ン… カズ！？」
ジュンの腕に抱えられたのは、深手を負ったカズだった。
驚いたサトシーラが駆け寄り、すぐに治癒を施そうと……
「無駄です……
これは そこのドジ野郎と同じく『黒の王子』に直接やられたものですから」
「そんな……っ……！！」
禍々しい気に阻まれ、『青の姫』の治癒の力が傷に届かない。
「なんだよ〜 カズまでやっちゃったの〜？」
「うっさいな
あんたみたいにマヌケな罠にはまったのとは、わけが違うんですよ」
血を吐き出してるにもかかわらず、
カズは、気丈に口調を緩めず笑ってみせる。
「なんか……内臓まで結構いっちゃってるんでね
もう あんまり もたないと思います」
「何を言うの！」
「いや、ホントだから 仕方ないっしょ」
「カズ！」
涙が溢れそうなサトシーラに、困ったように眉を寄せて、
血に染まってしまっている長い髪を掴む。
「俺の血でも汚しちゃって……ごめん」
「……っ……」
ふるふると首を振り、サトシーラは 精一杯に強がる年下の戦士の体を抱きしめた。
「痛いじゃないですか
あーあ！ せっかくあんたから抱きついてきたのに、手も動かせないなんて勿体ない」
まだ笑ってみせるカズの背中を擦り、
せめて痛みを和らげようと力を送りながら、サトシーラは涙をグッとこらえるのだった。
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