Blue Ocean ～青色王子に夢中～ (ページ41)

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とある新米探偵の誤算８ページ41

「申し訳ありませんが、今模型が出来上がって、これからというところです」

「おお～♪そうかそうか。ならとっとと考えてだな…」

カツン

「あれっ？榎本さん。お客様がいらしてたんですか？」

俺がたてた足音に気づいた女の方が、慌てたように見上げている。

「はい、先程」

「やだ、先に言ってくださいよ～」

シュークリームの箱を閉じ直して、俺の方に立ち上がると身なりを整えて頭をさげてきた。

「すみません！気づかなくて失礼しました。こちらは急ぎませんので、先に…」

「何を言う、青砥！急ぐに決まってんだろ！この俺がわざわざ時間割いて来てるってのに」

「芹沢さん、榎本さんは私たちに協力してくれてるだけで、本来のお仕事の邪魔をする権利はありませんよ」

「だけどだな！」

二人はどうやら上司と部下といった関係らしい。
勝手に言い合う様子に半ばあきれていたら、「大丈夫です」とアイツの凛とした声が聞こえた。

「あの人は、大丈夫です」

「は？」

「業務とは関係ありませんので、お気遣いはいりません」

こちらを見据える真っすぐな瞳。
俺は、何を言われたのか理解するまで時間がかかってしまった。

「え？そうなんですか？」

青砥と言った女もよくわかってないみたいだった。

「そうかそうか！榎本♪ 俺の方が大事ってわかってるんだなっ」

ガシッと抱き着くオッサン。

(おいおい、何でオッサンに抱き着かれたまま平気でいるんだよっ)

さっきの言葉の意味と、ひとまわりでかい男の腕に抱き込まれた華奢な背中に、カッとせりあがる何かを感じて、階段下まで駆け降りた。
それから、榎本の腕をひっつかみ、オッサンから引き離す。

「何ですか？」

「え？あ、あれ？」

「…………」

自分がとった行動の意味を問われても、俺自身がわからない。
ただ、腹が立って…って、え？なんでだ？

その間にも、じっと見つめられている視線に、俺はテンパるばかり。

(な、何なんだよ、これ)

「少し、猶予をいただけますか？芹沢さん」

くるりとオッサンの方に向き直る榎本。

「まだ模型を作ったばかりですし、これから密室のトリックを探します。その前に、片付けておくことができました」

つらつらとした説明に、オッサンも女もひとまず…ということで、その場を立ち去ることになったのだった。