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Trentaquattro ページ36

矢羽の根元に縛ってある紐を引っ張って手繰り寄せる。
さわさわ、しゅるしゅると音を立てながらどんどん長くなっていく紐。

こうやって見ると思ったよりも草を編んでいたんだな、と実感する。

もっと長くなっていって、やがて垂れて地面に付いた。

しゅるしゅるしゅるり。
そろそろ腕が痛くなってきたが、それでもまだ紐は続いている。

バイオリンを引く時のように、機械的に腕を動かす。
まじで腕がやばくなってきた。
うおぉぁ、唸れ拙僧の筋肉!

一旦休憩をした方が良さそうだと思案したところで、ぱさりと先程石から解いた紐の先が出てきて落ちた。

「う……腕ぱんっぱん」

ずっと上げたまま動かしていたので、ぷるぷると震えている。も、もげるかと思った……

でもこのままずっと休んでいる訳にもいかない。そんなことをしていれば日が沈んでしまう。

ぐぐっ、と最後の力を振り絞って、木の幹にぐっさり刺さっている矢の箆を掴んで引っ張る。

「ぐ、……うぬぬ」

めりめりと音を立ててどんどん鏃が顔を出してきた。
お、よしよし

ばきりと音を立てて矢が抜けた。

「よしっ!」

慣性の法則とやらで、引っ張った力の方向に傾きそうになった体を、幹にまわした方の手と両足で踏ん張る。

ぺいっと抜けた矢を下に投げ捨てて、するすると猿の木登りを逆再生したように降りていく。

「あ、なんかいい匂いがする」

矢に縛った紐の結び目を解いて紐を束ねていると、どこからか懐かしい匂いがしてきた。

少し違うところはあるけれど、この出汁の匂いはいつの頃も好きな匂いだ。

「……ラーメン……?」

まさか。
復活者の中に相当のガチ勢がいたのだろうか。
麺はどんな太さなのかな。具材は何が入ってるかな。

そこまで想像して、ふと自分はまだ昼食を食べていないことに気がついた。
ぐぅ、と小さく空腹を訴える腹をたしなめて、矢を筒に入れてそそくさと匂いのする方向に向かう。

あくまで様子見。そう自分に言い聞かせながら、開けた場所の手前の木に登って様子を見る。

「!」

間違いない。ラーメンだった。

ピロロ〜、と懐かしのチャルメラの笛の音と共に、集落の人が屋台車に群がってラーメンを貪るように啜っていた。

お、美味しそう……

思わず前のめりになってしまった体をぐっと抑える。そういえば先輩が先に向かってたんだった。何処にいるのかな。

きょろきょろと辺りを見回してその特徴的な薄紫の羽織を探す。

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_____(プロフ) - 米さん» 米さん初めまして!コメントありがとうございます。文章が硬くなってしまうのが悩みでしたので、そのように楽しんでいただけたのなら幸いです!相変わらずの亀更新ですが、米さん含め、皆様に楽しんでいただけますよう頑張ります。 (2020年4月13日 21時) (レス) id: 0c0dd0f299 (このIDを非表示/違反報告)
- 文章が読んでいて楽しくて、いつも楽しみにしています。これからも陰ながら応援しております。 (2020年4月13日 18時) (レス) id: 2a29b7989a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:____(かせん) | 作成日時:2020年3月26日 12時

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