とあるモブによる文明復興観察記

Ventisette ページ29

私も髪を束ねていた簪を抜いて、塩シャンプーの準備をする。

現代でも使われていた塩シャンプーは、市販のシャンプーのように脂を取りすぎたりしない。

ただ必要な分の皮脂だけを取っていってくれるので、思ったよりも地肌に優しい。

料理にも火薬にも使える万能な塩。

もちろん美容効果も持っており、塩シャンプーでは白髪や抜け毛防止、消臭効果やかゆみ防止となかなかお有難い効果を発揮してくれる。

まぁ結果が出るのは一朝一夕ではないが、この日用品が無くなった世界ではかなり優秀な部類だろう。

「二、三分置いて、またお湯で流せばそれで終わりです。頭皮をマッサージするようにして流すのがコツですよ〜」

はーい、とまた素直に返答が返ってきて大変微笑ましい。
温泉効果なのか、疲労や空腹によるネガティブな気持ちが薄まっている気がする。



「さっぱり〜！」

鞣してある革布で簡単に髪を拭い、夕飯の準備を始める。

頭も体もさっぱりしているおかげで、気持ちも少し軽い。
夜の帳が下りて、月明かりしか今は光がない。
薄暗いので、平地とはいえうっかり滑って転んでお釈迦、なんて間抜けな失態はしないように足元に意識を向ける。

もう慣れた手つきできりもみ式の着火をしていく。
今回は硫黄が周りにあり、火薬の材料にもなるということらしいので、道中拾ってきた石で釜戸を作り周りに飛び火しないようにする。

ミスをしたら爆発しそうで怖いので扱いには十分気を付けたいです(小並感)

ちりちりと小さな火の粉が舞えば、そこに間髪入れずに葉や草をどんどん投入していく。

ふぅふぅと息を吹きかければ更に炎は大きくなり、やがていつも夜に使っているほどの大きさになった。

「は〜い。今日はこのキノコと山菜と鹿肉を煮込んだスープで優勝していきたいと思いまぁす」
「誰に話しかけてるの鈴ちゃん」
「しっ」

ちょっとメタい発言をしてしまった先輩はさておいておいて。昨日狩った鹿の最後の皮を袋状にして、鍋の代わりにする。
ってこれ今日の昼もやった気がする。

が、もうこの際気にしない。
食事がシンプルで固定されているのはこの世界ではもういつものことである。

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