生徒と同じ方が団結力も感じるだろう ページ11
「あ、おかえり」
戻ってきたAと喜八郎に伊作が声を掛ける
「…死体が無くなっていた」
ただいま、と言う代わりにAが放ったその言葉に全員が顔を強ばらせる
「おそらくもう1人の忍びがまだ付近にいたんだ。例の要注意人物の解毒剤を持ち帰ろうと思ったんだが…私が甘かった」
Aは伊作を横目で控えめに見た
「まぁそれ以外特に変わったことは無かったから気にするな。作戦は何か思い付いたか?」
「ええ。1つ、良い案が浮かびましたよ」
三郎が目を細めて笑った
「……さすが変装名人、面白いものを思い付くな。やってみる価値はありそうだ」
作戦を聞いたAは口角を上げた
…桜田Aとして見せる、最初の笑顔だった
.
「学園長」
「ん?」
教師達と再び合流し、本格的に戦闘の準備に取り掛かったタイミングでAは学園長に声を掛けた
「先生方が着ている忍装束をお借りしたいのですが」
Aが今着ている事務員の制服は胸元に"事務員"と書かれている
形や性能は変わらないが、この装束で敵の前に出るのは少しばかり気が引ける
…つまり気持ちの問題である
「もちろん貸すのは構わんが…先生方のは大きいのではないかのぅ」
そう言って学園長は、教師が着る黒い忍装束ではなく、紫、藤、深緑の三種類の忍装束を取り出した
「上級生のですか」
「そうじゃ。背丈も同じくらいだろう、多少のサイズの調整は可能じゃから好きなのを選ぶといい」
並べられた忍装束は汚れも綻びも無く、新品だということがひと目でわかる
「これ…私が使って本当に良いんですか?」
他人の私が学園の大事な物品…しかも新品を使うのは気が引ける
そんな考えをAの視線から感じたのか、学園長は「構わん構わん」と笑った
「それに生徒と同じ方が団結力も感じるだろう」
「はあ…」
襲撃が行われるまであと一刻ほどだというのに呑気だな、なんて事を考えながらAは藤色の…五年生と同じ装束を手に取った
「ありがとうございます」
学園長が満足そうに頷くのを見てから、Aは着替える為に自身の部屋へと向かった
114人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たると | 作成日時:2022年5月8日 19時