この踏鋤でですかぁ? ページ10
「別人みたいですね」
「……」
沈黙が続いていた中、喜八郎は突然口にした
「驚いたか?」
Aは少し後ろを歩く喜八郎に目をやる
「そりゃ勿論。どこかの城の姫かと思ったらまさか忍びだったとは」
そんな会話もしたな、と学園に来た日のことを思い出しふっと笑った
「次は素のままの貴方を落とし穴に落としたいです」
Aは少し驚いて、喜八郎の方を振り返った
「あの時のこと知っていたのか」
「僕は誰が落とし穴に落ちたか必ず確認してます」
「…見ていたなら助けろ」
「助けようと思いましたよ、でも鉢屋先輩達が…」
ふいと視線を背けた喜八郎が、何かを見つけて目を開いた
「……!!」
同じ方向に目線を向けて、Aは言葉を失う
男の死体があったはずのその場所に死体はなく、代わりに血の海が広がっていた
「死体を回収されたのか…!」
(あの女…まだ付近で息を潜めていたのか、それとも戻って来たのか…)
どっちにしろ、自身の警戒が甘かったとAは眉間に皺を寄せる
「この血は…Aさんがやったんですか?」
血の海の反対側に立つ喜八郎の顔をAは呆れたように軽く睨んだ
「まだ幼い子供がいるこの敷地内で、こんなにするわけないだろう…」
敷地内じゃなければやっていたのかな、という考えが喜八郎の頭を過ぎる
「仕方無い、下級生に見られる前にこの部分の土を外に運ぼう」
その言葉に喜八郎は、うげぇ、と声に出し顔をしかめた
「この踏鋤でですかぁ?踏子ちゃんが血で汚れちゃう…」
Aは溜め息をつく
「どうせ戦闘も、普段はその踏鋤を使っているんだろう」
「そうですけど、それとコレとは別というか…」
「いいから、ほら、ちゃっちゃと運ぶ!」
喜八郎の言葉を遮り、急かすように手を叩くAに、仕方なくは〜いと返事をして、喜八郎は踏鋤を土へと差し込んだ
すっかり元通りになった地面を眺めて、腕を組んでAは考え込んでいた
(なぜあんなに血が…回収する前に死体に攻撃したのか…?だけどなんのために…)
「亜月さん、時間も無いですしそろそろ戻りましょう」
Aの横に音も無く立った喜八郎が言った
そうだな、と一言返事をして、二人は早足で先程の部屋へと戻った
生徒と同じ方が団結力も感じるだろう→←私に考えがあるのですが
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作者名:たると | 作成日時:2022年5月8日 19時