探偵チームKZ事件ノート卒業式は知っている

何年、何十年たっても。 ページ36

彩目線

トロい、トロいっていつも言うんだから。
んもう！
頬を膨らませる私。
その私を見て笑う若武。
その顔を見て。

私の胸はキュンとなった。
若、武…。
彩「私ね。さっき夢を見てたの。」
突然話し始めた私に少し驚きながらも返事をしてくれる。
若「あ、ああ。どんな夢？」
彩「清水くんとの事。」
視界の端に若武が一瞬、辛そうな顔をしたのが見えた。
彩「今の今まで黙っててくれてありがとう。清水くんの話をしたら私が悲しむと思ったんだよね？本当にありがとう」
トロいって言われる私。
だけど皆が私に気を使ってくれていたのは分かる。

彩「清水くんと過ごした時間は楽しかった。短い時間だったけど幸せだった。」
それは。
それはもちろん。
彩「今も、だよ？きっと清水くんもね。今、幸せだって思ってるんじゃないかな。」
若武は笑う。
でも、その笑顔には少し影があって。
っ…！
やっぱり辛いんだよね。
やっぱり悲しいんだよね。
私の事を若武は想ってくれていた、のに。
初めて告白された時。
私は少し若武の言葉にムキになって好きじゃ無い男の子。清水くんにOKし、若武に背を向けてしまった。
若武は私をすごく想っていてくれたはずなのに。
彩「若武、ごめんね。」
若武の姿がぼやける。
若「また泣く…。」
呆れた様な若武。
でも仕方ないよ。
私は若武を裏切ったも同然。
ごめんね。
本当にごめんね。

若武が今度は満面の笑みを浮かべながら。
若「さぁ。行こう。あいつら、もう来てるんじゃないかな。」と立ち上がる。
っ待って。
私、まだ伝えて無い。
彩「ねぇ。若武。」
若「ん？」
涙が出そうになるのを堪える。
彩「私は若武を裏切った。私は若武を傷つけた。それでもまだ、私の事を好きだって言ってくれる？」
水族館では好きって言ってくれた。
でも、今は…？
まだこの私を好きだって言ってくれる？
前は裏切った私を好きって言ってくれた。
今はもう、好きって…気持ちは無い？
若「ハァー。バカだな。俺、何年たっても何十年たってもお前の事を好きだと思う。」
若、武…。
ありがとう。
若武が伝えてくれた私への想い。
私も伝えるね…。


貴方へ想いを。


私は清水くんと出会う前から…。

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