約900文字です。バットエンド?寄り ページ3
「サヨナラは言わないで」
夕暮れ時、私は街を駆けていた。
側から見たらきっと酷い顔をしている事だろう。髪は乱れ、涙で顔はぐしゃぐしゃ、目は赤く腫れてるのではないだろうか。
しかし、今の私は周りの目を気にしている場合ではない。只々走り続ける、脇腹が痛くなっても息が苦しくなってきても走る。
私が向かう先は病院、私の最愛の人が入院している病院。
彼の病室は既に知っているため、自動ドアをくぐると直ぐに走り出した。
彼の元へ行くまでに注意してくる看護師の言葉なんて耳に入ってこないぐらいどうでもよかった。
只、一秒でも早く彼の元へと……
「隼人‼ 」
彼の病室は205号室、勢いよく扉をあけて飛び込んだ。
私の目に映った彼は恐ろしいほどに痩せていた。
「そんなに焦らなくてもいいのに」
私の手を握り、眉を下げ、困った笑顔でそう言った。
「だって、今日で終わりだって……」
走っている間に止まっていた筈の涙が、雨の様に流れてきて、それを隠す様に私はゆっくりと俯いた。
「顔上げなよ、泣かないで? 」
私よりも細くなってしまったその腕で、私を優しく抱き締めてくれた。まだ彼に温かさが残っている事が分かり、少しだけ安心する。
「怖く……無いの? 」
嗚咽を我慢しながら言葉を発した。
「怖いよ、とても」
薄暗くなってきた病室で、死への恐怖、二度と会えなくなってしまう怖さに耐えながら抱き締めあっていた。
二人して噎び泣きながら、強く、強く抱き締めあっていた。
頬を伝うこの涙は止まることを知らない。
「もう……終わり……なのかなぁ」
浅い息をしながらとても苦しそうにしている彼、それを見るともう時間がないということを再確認させられる。
「怖い、貴方がいなくなってしまう事が」
「……うん」
自分よりも彼の方が怖いことなんて分かっていた。理解している。
「でも、もう時間が……無いから……さよ」
言葉を言い終わる前に、人差し指で口を押さえられた。
「おれ、居るよ……側に……ずっと」
「ねぇ……サヨナラは言わないで? 」
目を細めて、とても綺麗に微笑んで言った。
「またね、貴方のこと世界で一番愛してる」
「うん、またね……愛して……る」
月の光が照らす病室で最期の口づけを交わした。
無慈悲な機械音を聞いて、また涙が頬を伝った。
こんな感じの話好きなんです。この話の彼が回復するよりこっちのがいいと思います(°▽°)
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作者名:花菜 | 作成日時:2018年5月3日 15時