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163話 ページ29

ゆっくりと振り返った先には、何故か呆然と立ち止まっている轟の姿があった。
しかし少しずつ瞳を悲しく揺らし始めた。

何故かその表情に『どうかしたの』という無粋な言葉はかけてはいけない気がして、彼の行動を見守ると、一歩ずつAに近づき、少し間を空けてベンチに腰を下ろした。

空が水色に輝き始め、草木が揺れる空間に2人きり。

すると、少し気持ちが落ち着いたのか、でもいつもよりはか弱い声で轟がAの名を呼ぶ。
顔を轟に向け、『ん?』と優しく返事をすれば、また寂しそうに瞳を反らす。

しかし轟はやわい風を髪に受けながら微笑んで言った。

「俺はずっとAのことが好きだ。」

変わらず、ずっと。そう続ける彼に思わず心が締め付けられる。
無意識に唇に力が入り、言葉が思うように出てこない。

「でも」

一度視線を正面に戻し、呼吸をあけてAに向き直る。

「Aの目に映ってるのは、俺じゃない。」

好きな人の気持ちの矢印は、言葉にしてなくても分かってしまうもんなんだな。そう心の中で笑っていると、フルフルと動くAの手。

思わず顔を上げて表情を伺うと、瞳に沢山の涙を抱えていた。

『ごめん、焦凍。私の口から一番に伝えなきゃいけない気持ちなのに。』

相手から返事を待っている間、その相手の気持ちが自分に向かなかったことを察したら、きっとやり場のない感情が体を巡ることだろう。

『気持ち、伝えてくれてありがとう。好きだって思ってくれてありがとう。でも、私も好きだと思っている人がいます。だから、ごめんなさい。』

真剣に考えて、考えて選んだ言葉だということはすぐ分かった。
きっと、好きな奴を思っている間俺のことも考えてくれていたのだろう。

軽く鼻をすする音に、目の前の彼女には傷ついてほしくないと思った。
俺は、Aを傷つけたくて気持ちを伝えたわけではないのだ。

「あぁ、Aは悪くねぇよ。俺が勝手にお前を欲しくなっちまっただけなんだ。
…まさか自分がこんなに誰かを好きになれるなんて思わなかった。
俺が知らなかったものをお前がくれたんだ。…ありがとうは俺のほうだよ。」



そう言った轟の表情は今でも鮮明に覚えている。

164話→←162話(轟side)



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作品ジャンル:恋愛
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MAKEOVER(プロフ) - ハゲ!ばか!さん» ありがとうございます!嬉しいです^^ (3月25日 22時) (レス) id: 6f5c55dffc (このIDを非表示/違反報告)
ハゲ!ばか! - 大変よいですね! (11月16日 20時) (レス) id: 16f3197883 (このIDを非表示/違反報告)
MAKEOVER(プロフ) - 夢桜さん» 応援ありがとうございます!最初から読んで頂いてるなんて凄く嬉しいです^^!ラストスパートですので、完結までお付き合いいただけると嬉しいです! (8月28日 0時) (レス) id: 6f5c55dffc (このIDを非表示/違反報告)
夢桜(プロフ) - ひえぇ!!まさか2年の体育祭を見れるとは思いませんでした!!最初から読ませて頂いてます!とても内容などが好きです!!これからも無理はせず頑張って下さい!! (8月26日 13時) (レス) id: 505f8e7c76 (このIDを非表示/違反報告)
MAKEOVER(プロフ) - 波風さん» お待たせしました!最後までお付き合いいただけると嬉しいです^^! (7月18日 0時) (レス) id: 6f5c55dffc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:MAKEOVER | 作成日時:2018年7月8日 14時

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