164話 ページ30
その日は一日中、上の空だった。
何かを考えようとしても思考が追いつかず、気がつけばため息をついていた。
ふと不定期に脳裏を過ぎるのは焦凍の最後の表情。
『はぁ〜〜…』
自室の机に伏せて思わず声が漏れる。
すると微かに窓の方から声が聞こえてきた。
「悪いね、つき合わせちゃって。」
「…さっさと終わらせろよノロマ。」
視界に映るのは親しげに話しながらトレーニング施設へ向かう耳朗と爆豪。
そういえば1年の文化祭でバンドを組んだって言ってたな。
目の前の光景に少しの霞がかかる。
『…欲張りだよなぁ、私。』
ぽつりと呟いたかと思えば、Aは即座に立ち上がりトレーニングウェアに着替え寮を後にする。
――――――――――――
『んあ゛あぁぁ！！』
踏ん張る声と共にドンっと言う地響きが建物に反響する。
足にはもう立つための筋力は残っておらず、ふらっとダンベルの横に倒れこんだ。
上がった息に額を流れる汗、必然的に視界に入る天井に「こんなに高かったっけ」とぼーっと考えていた。
すると聞きなれた声が頭上から降ってくる。
「A？」
『…出久。』
体を起き上がらせない姿を察してか、緑谷はAの隣に座りストレッチをし始めた。
「また随分追い込んでるね。」
『ん、まぁね。』
息も絶え絶えそう返せば、「Aって悩み詰めた時、限界までトレーニングするよね。」その言葉にふっと一瞬呼吸が止まるが、流石出久だとフッと笑ってしまう。
「それは僕じゃ力になれないのかな。」
優しい問いに、少しざわついていた心が穏やかになっていく。
『いや、ううん。私もよく分からないんだよね、』
整理のついていない内容ではあったが、自分の気持ちを素直に出していく。
『私の中で勝己は特別なんだけど、何ていうのかな、大好きな友達がいて、家族がいて、
その上勝己と一緒にいたいと思うのは贅沢すぎるんじゃないかと思って。
抱え切れるかも分からないものをただ欲しがるのは無責任に感じちゃってさ。』
要点のまとめられていない言葉を緑谷は優しく頷きながら聞いてくれる。そして胸の内を話し終えると、上半身だけ起こし、彼の目をゆっくり見つめる。
「Aは今まで我慢をしすぎてしまったから、皆が当たり前に思っていることも欲張りに見えてしまうんだろうね。それに、超ストイックだから自分を追い込むし過小評価しがちなんだ。」
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にのに - ご結婚だぁぁあ (2020年9月14日 10時) (
レス) id: 85146adaec (このIDを非表示/違反報告)
MAKEOVER(プロフ) - ハゲ！ばか！さん» ありがとうございます！嬉しいです＾＾ (2020年3月25日 22時) (レス) id: 6f5c55dffc (このIDを非表示/違反報告)
ハゲ！ばか！ - 大変よいですね！ (2019年11月16日 20時) (レス) id: 16f3197883 (このIDを非表示/違反報告)
MAKEOVER(プロフ) - 夢桜さん» 応援ありがとうございます！最初から読んで頂いてるなんて凄く嬉しいです＾＾！ラストスパートですので、完結までお付き合いいただけると嬉しいです！ (2019年8月28日 0時) (レス) id: 6f5c55dffc (このIDを非表示/違反報告)
夢桜(プロフ) - ひえぇ！！まさか2年の体育祭を見れるとは思いませんでした！！最初から読ませて頂いてます！とても内容などが好きです！！これからも無理はせず頑張って下さい！！ (2019年8月26日 13時) (レス) id: 505f8e7c76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：MAKEOVER | 作成日時：2018年7月8日 14時
