MTCといろいろしたい！−群青−

76.・【Crazy M】 ページ9

誰かの声が聞こえた。
その声に応えるように目を開くと、すぐそこに恋人の顔があった。
目が合うと、理鶯はぱっと顔を綻ばせた。

「…！A、目覚めたのか」
【…うん。私、どうなってたの？】
「病院に搬送され、一ヶ月意識不明の状態だったのだ。…おそらく、飴村乱数と天谷奴零が視界に入ったからだろう」

そうだった。私は全ディビジョン顔合わせの時、集まっていた彼らを見て倒れたんだ。
それが一ヶ月前…ってことは、私はどれだけ理鶯を不安にさせてしまったんだろう。

私がそんなことを考えていると、理鶯がすっと深く頭を下げた。

「本当に済まない。小官の配慮が足りていなかった」
【理鶯の所為じゃないよ。私のことを思って、あの場に連れて行ってくれたんだから】

それなのに迷惑かけてごめん。
そう言葉を結ぶと、彼は悔しそうに手が白くなってしまうほど、両拳を握りしめた。

「…小官は、最低な人間だ。A、せめて貴殿に殴られでもしなければ、小官は自分自身を許せない」
【…そんなことしたくない！だって、理鶯が悪いわけじゃないんだから！！】

心のままに叫んで、ベッドから飛び出し理鶯を抱き締める。私の存在を示すように、固く固く。

【お願い、理鶯。そんなに自分を責めないで。仕方ないことだったんだから】

僅かに理鶯の心臓の鼓動を感じながら、静かに自分にも言い聞かせるように伝える。何を言えばいいのかわからなくて、これしか言葉が出てこなかった。

「…済まない、本当に。何度謝っても謝りきれない」
【もういいよ。一ヶ月も不安な気持ちにさせてごめんなさい。退院したら、いっぱい理鶯のご飯食べさせて。左馬刻さんと銃兎さんも一緒にね。そしたらそれきりにしよう？】

私がそう提案すると、彼は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした後、ふっと息を吐いて微笑んだ。

「貴殿は優しいな。…二度と目覚めなければと危惧していたが、本当にもう一度Aのその言葉を聞けて良かった」

その言葉に、とくんと私の胸が甘く疼いた。今まで忌み嫌われてきたこの言葉を、愛する人に改めて認めてもらえたんだ。

私が理鶯を見つめると、意図を汲み取ったらしい彼が、自分の唇を私のそれと合わせてくれる。

幾度も重なるその甘さを感じながら、私は退院後の日々のことをぼんやり考えていた。



リクエストありがとうございました！

　

77.リク：MTCの前で『Never Grow Up』を歌った→←76.・【45 Rabbit】

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