MTCといろいろしたい！−群青−

76.リク：全div顔合わせ時飴村乱数と天谷奴零を見て倒れ、一ヶ月意識が戻らなかった貴女とMTC【Mr.Hc】 ページ7

左馬刻に連れられて来た全ディビジョンの顔合わせ。私はそこで、忌まわしい男を前に立ちすくんでいた。

「Aオネーサン、久しぶりっ♡逃げ出してからちょっとは何か変わったのかなあって思ってたけど、全然変わってなくてびっくりしちゃった！
…まだ、そんな異常者みたいな言葉使ってんだな。まあ、中王区の犬のお前にはお似合いだ」

豹変した飴村乱数の低い声が、意識を蝕んでいく。意識が途切れる直前に私の耳に届いたのは、恋人が私を呼ぶ悲痛な声だった。


✤


不意に手にぬくもりを感じ、瞳を開く。目に入ったのは、陽射しが柔らかく遮られた窓と、

【左馬刻…？】

私の手を握り、寝息をたてていた左馬刻だった。彼の目の周りには、泣き腫らしたような跡が――と思う間もなく、左馬刻はぱっと目を覚ました。そう大きい声でもなかったのに。

寝起きのぼんやりした顔で私をまじまじと見つめると、何も言わずごしごしと強く自分の目を擦る。

【さ、左馬刻！そんなことしたら、おめめ痛くなっちゃうよ！】

慌てて止めると、ぴたりと行為を止めた彼が、真意のわからない瞳で私を見上げた。

「夢じゃねえよな？まじだよな？」
【う、うん。ごめんね、泣かせちゃったみたいで】

「…っうるせぇ」

くしゃっと顔を歪ませた左馬刻は、私を強く抱き締める。怒られると思ったら、違った。

話を聞くと、どうやら私は一ヶ月も意識不明だったらしい。
え…シンプルに申し訳ない。

【左馬刻、心配かけてごめんね】
「アホか。謝んのは俺の方だ」
【んぇ？】

予想外の言葉に、思わず変な反応をしてしまう。左馬刻なら、「俺様がどんだけ待ってやったと思ってんだ今から身体で一ヶ月分満たしてもらうぞボケ」とか言ってくるかと思った。
そんな考えに反して、彼は至って真面目な顔でそう言った。真紅の瞳と視線がかち合う。

「俺が無理矢理連れてかなけりゃ、テメェが傷つくことも意識ぶっとばすこともなかったんだ。

俺はテメェの言葉がわかっただけで、テメェの全部をわかった気になってた。けど、そうでもなかったみてぇだな。…悪かった」

左馬刻は頭を下げた。今までにこんな彼の弱った姿を見たことがなかった私は、彼のふわふわの頭を撫でる。

【頭を上げて。私も左馬刻の誤解してたみたいだし。お互い様ってことで】
「…？…おう」

私の言葉に釈然としないような顔をしながらも、私達はどちらともなく唇を合わせた。
これから、お互いをもっと深く理解しようと誓うために。


　

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