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お店を出ようと、扉に手をかけた。
筈だったのに。
「逃げんの……?」
私の腕を掴んで、聞いたことない低い声で。
そう言う独歩。
「だ、だってほら!伊弉冉くんにも悪…」
「ふざけてんの?ねぇ…」
言葉を遮るように発せられた独歩の声は、顔は。今まで見たこともないほど、怒りと悲しみで溢れてて。
「だ、だって……」
言い訳をしたくても出来ない。腕を引かれて、テーブルを挟んで向かい合わせに座った。
私は、なるべく一二三に近寄らないように、通路側に避けて。
「ずっと会いたかったのは、俺らも一緒だ。特に一二三なんか、あれを切っ掛けに、女子の連絡先消しやがって…」
連絡しようにも出来なかったんだよ、悔しそうに呟く独歩。
「……で、も…」
怖がってるし。
そう言ってチラリと一二三に視線を向ければ、彼も此方を見ていた様で、視線が合うとビクリと肩を跳ねさせて独歩にしがみつく。
それを見て、何故か目頭が熱くなる。泣いたって、彼が戻る訳じゃないけど。
痛いほど唇を噛み締めて、涙を堪える。
痛い。
心が、締め付けられるように痛い。
いつの日かの、一二三にベタベタと触る女子たちと。
笑顔で対応してた、一二三を見たときの様に。
彼女でもないのに嫉妬して、自分がちっちゃい人間だと思い知らされて。重い奴だと分かって。
釣り合わないと実感させられて、悔しくて。あの日の様に、ズキズキと痛い。
苦しい。
私が触っても、「え〜?何、そういうことしちゃう系〜?」なんて馬鹿にされたのに。
「え、ちょ、あんま触んないで…」拒まれたのに。
スカートを握り締めた手の甲にボタボタと落ちる、大粒の涙。
それに気付いた独歩が「え、あ、俺言い過ぎた…ごめん…俺が言い過ぎたから…」なんて自虐を始めるから。
涙を雑に拭って。
汚くてもいい。
笑顔で。
「わ、私、何も出来ない、無力な奴でごめんね?相談にも乗れなくて。女性相手なら、何か出来たかも知れないのにっ……」
「私が無力だから、頼ってもらえる程の器じゃなかったから、二人はこんな大変なもの抱えてるのに、私だけ……」
呆気にとられる二人に目をやり、「…ごめんなさい………」そう謝り、飲み物代だけ机に置いて立ち上がる。
「それじゃ……バイバイ」
またね、とは言わない。会えない。会いたくない。
この想いは、何処かに捨ててしまいたかったから。
山田三郎 / 離れないから→←伊弉冉一二三 / 好きだった人へ
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーナンバー
8
今日のラッキーカラー!
入間銃兎「俺の色に染まりたい?まだだな、まだ、早い」
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おやたぬき(プロフ) - Nanaさん» 嬉しいお言葉有り難うございます!プロポーズする独歩君ですね!!了解しました!!!少しお待ちください!!!!リクエスト有り難う御座います!!!!! (2018年8月29日 18時) (レス) id: 2cb3b2c501 (このIDを非表示/違反報告)
Nana - どれも素敵なお話でした!良ければプロポーズする独歩くんのお話 よみたいです!!! (2018年8月29日 17時) (レス) id: 47b6b0fdaf (このIDを非表示/違反報告)
おやたぬき(プロフ) - 公序良俗さん» 了解しました!!暫しお待ち下さい!リクエスト、有難う御座いました! (2018年8月28日 19時) (レス) id: 2cb3b2c501 (このIDを非表示/違反報告)
公序良俗 - すいません。リクエストで寂雷さんが嫉妬するお話お願い出来ますか? (2018年8月28日 16時) (レス) id: 75b87ef95f (このIDを非表示/違反報告)
たぬきのこ(プロフ) - 朧流水斬さん» ひぇ!!そんな嬉しいお言葉貰ってはにやけが止まりません((独歩くんのヤンデレですね…!少し御待ち下さい!!有難う御座います!!! (2018年8月25日 11時) (レス) id: 2cb3b2c501 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おやたぬき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sakuhi/
作成日時:2018年8月17日 10時