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Jk side
「ママは元気?」
「うん!」
今日は虫を捕まえに来ているらしい。
体に似合わず大きな虫かごを首から下げていた。
「虫いた?」
「いたー!とって!グゥーとって!」
いつのまにか俺は「グゥ」と呼ばれるようになった。
自分の名前ですらシヨルはまだうまく言えないみたいで、
「シヨね、」
と言うのかとてつもなく可愛い。
舌ったらずでたまに出る赤ちゃん言葉。
一生懸命に話しているのを見ると抱きしめたくなる。
それなのに語彙力があるから驚きだ。
「そんな言葉よく知ってるね」と言うと頬を膨らませて怒る。
「…ねえ、シヨル」
「なに??」
「パパは??」
心臓が口から飛び出そうなくらいドキドキした。
おまえは分かるのか?
自分の父親を。
それともわからないのか??
シヨルには母親、Aしかいないのか…??
「パパ?」
シヨルは大きな目を更に大きくして俺を見上げた。
「パパはいないよ」
「……そっか」
シヨルはさほど気にしていないのか、まだ父親がいないことに何の疑問も抱かないのだろうか。
ふらっと歩きだし、公園の木の根元にしゃがみ込んだ。
「ねえ、虫!いる!」
「んー?」
俺よりも先に「なんだなんだ」と他の子たちも集まってくる。
大柄な男の子がシヨルの指差すカマキリを捕まえて、そっとシヨルの虫かごに入れてくれた。
よかった、他の子とも仲良くしてるんだな。
この公園に来るとシヨルは必ず俺の元へ走って来る。
何度か、保育園の先生にも挨拶された。
「いつもすみません」「絵を描くお邪魔になりませんか?」「あの、近くに住んでる方ですか?」
やたら女の先生たちは俺に寄ってくる。
カマキリを潰さないように触って、シヨルは「グゥ見て」と手招きする。
「グゥは何歳?」
唐突だな。
「グゥは27だよ」
「大人?」
「あはは、もちろん」
「ふーん!」
なぜかシヨルは嬉しそうだ。
「グゥがパパならいいのに」
…
そうだね。
頭の中が一瞬で真っ白になり、言葉が出てこなくなった。
固まってしまった俺を見てもシヨルは何も気づかず、カマキリを触っている。
俺も思うよ。
おまえの父親だったらいいのにって。
「ママが嫌がるよ」
「ママ?」
「うん」
「そっかー」
そこで保育園の先生がシヨルを呼ぶ。
もう帰る時間らしい。
「ばいばいグゥ」
「ばいばい」
シヨルの姿が見えなくなってから、少しだけ涙が出てしまった。
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う - 最高すぎる! (2021年8月27日 0時) (レス) id: e80e14e0ea (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 名作すぎます (2020年1月23日 3時) (レス) id: b6570be25e (このIDを非表示/違反報告)
ぺう(プロフ) - とても良かったです。 (2019年2月4日 12時) (レス) id: 8883837a46 (このIDを非表示/違反報告)
cooky - とても、感動する作品でした!!!最後、ハッピーエンドになってよかったです。けれからも、がんばってください♪ (2019年1月16日 1時) (レス) id: 13ad5ea90e (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - めっちゃ好きで、もう何回も読んでます (2018年10月24日 21時) (レス) id: f12f5d2dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソラン | 作成日時:2018年8月31日 12時