冬眠1 : JK

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あいにくにもその日は雨だった。

雨の日は基本外には出ないけれど、どうしてもカフェに行きたかった。

それに天気予報では午後くもりになる予報だ。


「じゃあ行ってくるね」

「ほんと、何かあったらすぐ連絡すること」

「わかってるよ」

「気をつけてね」


ジョングクはわざわざ外までお見送りしてくれた。


少し振り返ってみるとまだエントランスに立って、こちらを心配そうに見ている。


ふふ、と笑って手を振ると、苦笑いしながら彼も手を振ってくれた。



____


カフェは平日の午後ということもあってか、そこまで混んでいなかった。

異国ということもあり、少し緊張しながらカウンターで注文を済ます。

なんとなく直感でモカにした。



1番はじっこの2人がけの席に座る。

大きめのトートバックから持ってきた本を数冊取り出した。


あらかじめ買ってある、日本人作家の小説の、韓国語版だ。

韓国語版の小説と日本語版の同じ小説を交互に読んで勉強する。


最初は面倒で出来なかったが、今では少しずつ読めるようになってきた。

テレビを見る時に韓国語の字幕を付けて見るためなのか、どんどん上達している。



持ってきた韓国語版の小説を片手に、著者名順に並べてある本棚を眺める。

お目当ての小説はすぐに見つかった。

有名な作家の有名な作品を選んで良かった。

定番なのだろう。

同じ本が2冊並んでいた。



程よいあたたかさに冷めたモカをちびちび飲みながら、勉強を開始する。


10ページほど進んだ時だ。


「あれ？」と韓国語が頭上から聞こえた。


驚いて顔を上げると、明らかに韓国人の青年が立っていた。

ぽってりとした唇を半開きにして、私を見ている。


「あの、なにか？」

韓国語で聞いてみると、青年はパァ！と表情を明るくした。


「やっぱり！君も韓国人なんだ！」

「あ、えっと、はい」

「隣、いい？？」

「もちろん」


あまりにも彼の笑顔が眩しくてたじたじになってしまう。

空いていた隣の2人席に青年が腰を下ろした。


「ごめんね！俺、ここに引っ越してきてから韓国人に会えたの初めてで！」

「あ、そう言えば、私もです！」

「ほんと！？いつからいるの？」

「んーと、3年くらい前かな」

「長いんだね！俺はまだ1年半」

「えっと、名前は？」

「ごめん！！俺、パク ジミン。23歳。君は？」

「チョン A。同じく23歳、です」



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