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話したくないと言われたから5日。
あの日から、Aさんは俺の修行にあまり顔を出さなくなった。
顔を出してもこっくり、こっくりと頭が動き、眠っていることが多くなった。
夜回りの疲れに、俺の質問が圧になってしまったんだと反省している。

「Aさん、帰りましょう」

「……ん?あぁ、帰ろうかね」

前は山の話や、近くで見かけた動物や木の実、鬼の話をしてくれたけど
今は無言で鱗滝さんの家に向かっている。

こんなことになるならあの時、話さなければよかったと後悔してしまう。

「Aさん、」

「なんだい?」

会話がない空気に慣れなくて、俺は話しかけてしまった。
大した用もないのに。何を話せばいいんだ。

「えっ……と……」

「……」

あの時と同じ狐の細目が俺を見ている。

「あの……」

話題を探せ。なにか、話せることを

「最近はどう?」

「え?」

「鱗滝さんの修行。最近山下り厳しくなったでしょ」

「あ……はい」

Aさんから話してくれた。
何か、何か返さないと。

「……空気が薄くて、呼吸がしづらいです」

「うん」

「おまけに斜面も急で、気をつけないと転びそうで」

「うん」

俺が修行のことをぽつぽつと話している間、Aさんは常に相槌を打っていた。

「……罠も……沢山で……」

……ダメだ、会話が続かない。

「……」

どうしよう。

「最初は誰でも初心者」

「?」

「私のお父さんがよく言ってた。最初は誰でも初めてで、不安しかない」

あれ

「でも、努力を積み重ねればいいんだって。上手くいかなくたって、突然使う時が来る」

いつもは悲しい匂いなのに

「……炭治郎くんは、強くなれる」

今は

「だから、ね。今、頑張るんだよ」

自信に満ちた、優しい匂いがする。

「……はい」

「うん。できるよ、炭治郎くんなら」

Aさんは俺の頭を撫でるとまた歩いて行った。

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花帆 - 年上夢主さんに甘えてしまう炭治郎本当に可愛い(大好物)ので読めて嬉しいです! わぁ、また書かれた際はぜ拝読できるのを楽しみにしておりますね(*´ω`*)  (2019年9月2日 19時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
五十土(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます!お兄ちゃん炭治郎が年上相手にどうするのか書いてみたかったので、好きになっていただけてよかったです^ ^続編もできたら書いてみようと思います。応援ありがとうございます( *`ω´) (2019年9月2日 17時) (レス) id: a2d3564c6a (このIDを非表示/違反報告)
五十土(プロフ) - 鈴香さん» コメントありがとうございます!時間ができたら頑張ってみます!応援ありがとうございます(`・ω・´) (2019年9月2日 17時) (レス) id: a2d3564c6a (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 一気に読ませて頂きました!年上に恋する炭治郎めっちゃ良かったです(*´ω`*) 可愛い…鬼殺隊に入ってからの炭治郎めっちゃカッコ良くなりますし、両想いになるまでやなった後もすごく見てみたいです…!続編も読めると嬉しいです(o>ω<o)受験ファイトです! (2019年9月1日 12時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
鈴香(プロフ) - この作品すごく好きです!!続編や番外編!楽しみにしてますね!受験頑張ってください!(*´ω`*) (2019年8月6日 15時) (レス) id: 433bf9ff90 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:五十土 | 作成日時:2019年4月30日 1時

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